雑音指数

雑音指数（Noise Figure: NF）とは

雑音指数（Noise Figure、略称：NF）は、増幅回路やその他の電子回路における、入力信号対雑音比（SNRin）と出力信号対雑音比（SNRout）の比率を示す指標です。この値は、回路が信号にどれだけのノイズを付加するかを定量的に評価するために用いられます。理想的な回路では、入力された信号がそのまま増幅され、ノイズは一切加わりませんが、現実の回路では必ずノイズが発生し、信号の品質を低下させます。雑音指数は、このノイズの増え具合を表す数値として、回路の性能を評価する上で非常に重要な役割を果たします。

雑音指数の定義

雑音指数（NF）は、以下の式で定義されます。

math
\mathrm{NF} = \frac{SNR_{\mathrm{in}}}{SNR_{\mathrm{out}}}


ここで、\( SNR_{\mathrm{in}} \) は入力信号対雑音比（Signal-to-Noise Ratio）、\( SNR_{\mathrm{out}} \) は出力信号対雑音比を表します。

この式からわかるように、雑音指数は常に1以上（または0dB以上）の値を取ります。これは、回路を通過する際にノイズが加わるため、出力側のSNRが入力側よりも必ず低下するためです。理想的な回路（ノイズが全く加わらない）ではNFは1（0dB）となり、実際にはNFが1に近いほどノイズの少ない高性能な回路であると言えます。

雑音指数の意味

雑音指数は、回路が信号にどれくらいのノイズを加えるかを示す指標です。あるS/N比の信号が回路を通過すると、その回路自体が持つノイズが信号に加わり、結果として出力側のS/N比は必ず低下します。雑音指数は、この低下の度合いを数値化したものであり、回路のノイズ性能を評価する上で重要な指標となります。特に、微弱な信号を扱う場合や、高品質な通信システムにおいては、雑音指数の低い回路を使用することが非常に重要です。

雑音指数の特性

雑音指数は、一般的にデシベル（dB）で表されることが多く、値が小さいほど優れたノイズ性能を持つことを意味します。例えば、NFが3dBの回路は、入力信号のS/N比を3dB低下させることを意味します。

複数回路の接続時の雑音指数

増幅回路が直列に接続されている場合、全体の増幅率は各回路の増幅率の積（dB表現では和）で計算できます。しかし、雑音指数については、全体のNFは単純な和では求められません。一般的に、入力側に配置された増幅回路の雑音指数が全体のNFに大きく影響します。これは、最初の回路で加わったノイズが、後続の回路で増幅されるためです。したがって、多段構成の回路では、初段の回路のNFを低く抑えることが、全体のノイズ性能を向上させる上で非常に重要になります。

雑音指数の応用

雑音指数は、無線通信、レーダー、計測器など、さまざまな分野で利用される電子回路の設計や評価において不可欠な要素です。例えば、低雑音増幅器（LNA）の設計においては、雑音指数を最小化することが重要な目標となります。また、通信システムの設計においては、全体のノイズ性能を把握し、適切な回路構成を選択するために、雑音指数が重要な指標として用いられます。

まとめ

雑音指数（NF）は、電子回路のノイズ性能を評価するための重要な指標です。入力信号と出力信号のS/N比の比率で定義され、回路が信号にどれだけのノイズを加えるかを示します。NFの値が小さいほどノイズが少なく、高性能な回路であると言えます。複数の回路が接続されている場合は、特に初段の回路のNFが全体のノイズ性能に大きく影響するため、注意が必要です。雑音指数は、電子回路の設計、評価、そして様々なシステムの開発において、常に考慮されるべき重要な要素です。

もう一度検索