雪割草 (小説)

『雪割草』

概要

『雪割草』は、横溝正史による長編小説で、1940年から1941年にかけて『京都日日新聞』で連載されました。この作品は横溝作品の中で唯一の家庭小説として位置づけられています。物語は、出生の秘密を抱えた主人公、有爲子が、様々な苦悩を乗り越えながら一人の妻、そして母として成長していく姿を描いています。

書籍の歴史

この小説は、二松學舍大学と世田谷文学館に所蔵されていた草稿から復元されたものです。最初の連載は『新潟毎日新聞』にて行われ、1941年には連載が終了しました。しかし、横溝正史の意図が反映されたこの作品は1940年から41年までの複数の新聞に掲載されていたことが確認されています。2018年に戎光祥出版から単行本として発売された際には、連載の最終回部分が失われていたため、研究者たちによって補完が施されました。2021年にはKADOKAWAから文庫版が出版され、こちらは最終回の補修を含む決定版とされました。

物語のあらすじ

物語は、信州・上諏訪に住む緒方有爲子が旅館「鶴屋」の息子、宮坂雄司との婚約を前に、突如として破談を告げられるところから始まります。その原因は、有爲子が実父ではなく、亡き妻の私生児だったためです。激怒した有爲子の養父、緒方順造は倒れ、その後、彼女自身の出生の秘密を知ることに繋がります。

有爲子は実の父親を探しに上京するが、運命は厳しく、身を寄せた恩田勝五郎の陰謀に巻き込まれます。彼女は自らを守るために、過酷な状況に立ち向かい、様々な人物との出会いを経て成長していきます。特に、賀川仁吾という日本画家との出会いが彼女にとって大きな転機となります。

仁吾との関係が深まる中、有爲子は自身の出生や人生の意味について考えさせられ、どう生きていくべきかを模索します。しかし、彼女の周囲には様々な困難が待ち受けており、それに立ち向かう姿が物語の中で描かれています。

登場人物

• - 緒方有爲子: 主人公。出生の秘密を抱え、婚約破棄により人生の大きな変化を迎える。
• - 緒方順造: 有爲子の養父、地方の実力者。
• - 賀川仁吾: 日本画家。彼との出会いが有爲子に影響を与える。
• - 恩田勝五郎: 有爲子の世話をしつつ、彼女を陥れようとする人物。
• - 五味楓香: 日本画家の大家。仁吾の師匠でもあります。

この作品を通して、横溝正史は人物の内面、家族の複雑な関係、そして運命に翻弄される女性の姿を描き出しています。人と人との繋がりや、家族としての絆の意味を問いかける深い物語です。

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