雪渡り

雪渡り（ゆきわたり）

宮沢賢治による創作童話『雪渡り』は、狐の紺三郎と子供たちとの心温まる交流を描いた物語です。本作は1921年の12月に『愛国婦人』誌に掲載され、賢治のデビュー作として知られています。賢治はこれにより生涯唯一の5円の原稿料を受け取ったとされています。

物語の背景は、雪に覆われた日々に展開されます。主人公の子供たち、四郎とかん子は、遊びの最中に狐をからかう歌を歌っていると、本当に狐が現れます。紺三郎という名の狐は、子供たちに黍団子を勧めますが、かん子の失言によって彼は不快に思います。その結果、紺三郎は「嘘をつくのは大人の人間だ」と主張し、その証拠を示すために幻燈会に招待します。子供たちは行きたい気持ちを抱きつつも、兄たちからアドバイスを受けて準備を整えます。

冷たい月の夜、四郎とかん子は再び紺三郎との約束を思い出します。兄たちに見つかるものの、事情を理解してもらい、持参するお土産に鏡餅を渡されて森へ向かいます。森の奥で待っていた紺三郎は、狐の小学校で子狐たちに囲まれており、そこが幻燈会の会場となります。会が始まると、紺三郎は開会の挨拶をし、会場は和やかな雰囲気に包まれます。

幻燈会では、「お酒のむべからず」という映像が映し出され、大人たちの酔っ払いの姿が映写されます。この時、子供たちは狐の団子を食べるかどうかためらいますが、四郎は紺三郎の真心を信じ、団子を食べることに決めます。この団子は予想を裏切るほど美味しく、狐たちは嬉しさに満ち溢れます。彼らは信じてもらえたことに喜び、団子の味わいを通じて誠実さや友情が深まったことを確信するのです。

幻燈会の後半では、「わなを軽蔑すべからず」や「火を軽蔑すべからず」といった教訓を込めた絵が映し出され、物語は最後の場面へと進みます。紺三郎は子供たちに自分たちの誠実さを伝え、この良い評判を広められると語ります。やがて、兄たちが迎えに来て、物語は締めくくられます。

この作品では、主に子供たちが悪評高い狐の団子を実際に体験し、先入観を捨てて信頼関係を築く様子が描かれています。また、古いわらべ歌が物語を彩り、狐と人間の間の偏見をなくすために紺三郎が務める啓蒙的な役割が示されています。

さらに、この物語は1994年にアニメ映画化され、また何度もラジオドラマとしても楽しませてきました。アニメ版では、賢治の温かさと独特の世界観が色とりどりに表現され、多くの人々に愛されています。

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