雪舞

小説『雪舞』について

渡辺淳一の小説『雪舞』は、1973年に出版された作品で、日本の医療現場を舞台にした感動的な物語です。本作は、優秀な脳外科医・野津修平と、彼に秘かな恋心を抱く看護婦・祥子の心情が描かれながら、病院での出来事が展開していきます。物語の背景には、医療現場ならではの倫理的な葛藤や人間関係の複雑さがあります。

あらすじ

物語は北海道札幌市の病院から始まります。野津修平は、脳外科の専門医として働き、周囲から高く評価されています。そんな彼に対し、看護婦の祥子は密かに想いを寄せています。ある日、友人である小児科医・水江からの依頼で、野津は有名な建築家・桐野倫一郎の長男・亮一の診察を担当することになります。この家族は外見上は恵まれた生活をしているものの、夫婦の関係は冷え切っていました。

亮一の病気は水頭症と診断され、治療方針を巡って医師たちの間には意見の対立が生じます。手術を行うべきか、経過観察にするべきか、悩む野津。彼は手術を強行するべきかどうか迷いますが、結局、後輩の谷村とともに手術を決断します。手術中は様々な危険が指摘される中、野津はその決断に固執し、手術を続行しました。しかし、亮一は手術ののちに容態が急変し、ついに亡くなってしまいます。

それから、事件の責任を問われた野津は、医師長の遠野からの叱責を受けることになります。さらに、桐野は自身が息子の死に直面できなかったことから、医療界に対して怒りを抱き、札幌市医師会に提訴します。その裁判の中、遠野は野津に責任を押し付けるよう命じますが、良心に苛まれた彼は自ら手術の決断をしたことを認め、証言してしまいます。

転機が訪れるのは、彼が根室に転勤することになった後。そこで新たな生活を築いている最中、遠野からの連絡で、桐野家との和解や夫人が妊娠したことを知らされます。意味深いように雪が舞い降る場面で、野津は内心の葛藤を抱えつつも再出発の決意を固めます。

テレビドラマ化

小説『雪舞』は、1974年と1984年にそれぞれテレビドラマとしても放送されました。1974年版は日本テレビの「火曜劇場」という枠で放映され、佐久間良子や加山雄三（後に降板）、高橋昌也らがキャストとして出演しました。1984年版はTBSの「愛の劇場」枠で放送され、香山美子や大出俊などの俳優たちが演じました。

このように、渡辺淳一の『雪舞』は、医療現場の苦悩や人間関係を鮮やかに描いた作品として、多くの読者や視聴者に感動を与え続けています。

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