零時 (ドイツ史)

ドイツ史における「零時」 

「零時」とは、1945年5月8日のドイツ国防軍の無条件降伏によりナチス・ドイツ体制が崩壊し、第二次世界大戦の終結とともに戦後の歴史が始まった重要な瞬間を指します。この日を境に、ドイツは新たなスタートを迎え、それに伴い様々な歴史的変遷が起こりました。

降伏の瞬間 

1945年5月7日午前1時41分、連合国遠征軍の最高司令部があるフランスのランスで、連合国軍司令官ドワイト・D・アイゼンハワー元帥とドイツ国防軍最高司令部作戦部長アルフレート・ヨードル大将が無条件降伏文書に署名しました。この文書により、停戦が発効したのは中央ヨーロッパ時間の5月8日23時01分です。この出来事はドイツだけでなく、世界にとっても転機となりました。

戦後の記念日 

ナチス体制が崩れた後、ドイツを占領した連合国軍によって5月8日が「国際解放日」とされました。これに伴い、占領下のドイツでは毎年式典が行われましたが、共産主義的な色彩が強いとされ、徐々にドイツ連邦共和国（西ドイツ）においては廃止されることとなりました。特に西ドイツでは、当初この日を忘れ去る傾向が強く、政治的な式典はほとんど行われませんでした。

その一方で、再建の始まりや復帰の日とする意義を見出す動きもあり、ドイツ連邦共和国の憲法制定日が5月8日であることがその一例です。ドイツ民主共和国（東ドイツ）では1966年まで5月8日が「解放記念日」として定められていたが、1967年からはソビエト連邦の戦勝記念日が5月9日であることを考慮し、「勝利記念日」と変更されました。

歴史的意義 

1975年、連邦大統領ヴァルター・シェールはこの終戦の日をナチズムからの解放の日と位置付け、この見解は後のリヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカーへと受け継がれ、広く認知されるようになりました。さらに、2006年にアレンスバッハ世論調査研究所が行った調査によると、多くの人々が第二次世界大戦の終結を「再建の始まり」と関連付けていることが明らかとなり、74％がこのテーマを挙げました。

また、戦後ドイツでは、降伏を「敗戦」とみなすことよりも「解放」と、「解放」よりも「再出発」と捉える傾向が強いことも特徴的です。このため、5月8日が「零時」と表現され、ドイツにおける新しい出発の象徴となっています。

現在の記念日 

ドイツ連邦共和国では、記念日を制定する権限は州にあるため、公式な記念日として設定されてはいません。また、戦没者を追悼する「国民哀悼の日」は11月に行われ、5月8日に国旗を掲げるのはほとんど見られません。逆に、7月20日の抵抗記念日が国旗を掲揚する日として重要視されています。

このように、ドイツにおける「零時」は単なる戦争の終結ではなく、再建と新たな歴史のスタートを意味し、現在もさまざまな形で人々に受け継がれています。

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