雷火

雷火（らいか）

『雷火』は、原作を寺島優、作画を藤原カムイが手掛けた日本の漫画作品です。1987年から1997年まで、スコラの漫画雑誌『コミックバーガー』および『コミックバーズ』にて連載されました。藤原カムイの代表作の一つであり、ほぼ同時期に連載されていた『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』と並び称されています。

単行本

デラックス版（スコラ刊）

1988年から1997年にかけて全12巻が発刊されました。各巻約300ページ、小口三方色塗り、パール紙のカバーといった豪華な装幀が特徴です。最終12巻は500ページを超えるボリュームでした。最終巻は「12巻」とは表記されず、「了」となっています。出版社の倒産により、現在は絶版となっています。

普及版（スコラ刊）

連載中の1997年から1998年にかけて、毎月1巻のペースで発売された廉価版です。表紙はすべて描き下ろしで、DICカラーガイド第二版のみから選択した渋い配色が好評でした。こちらも出版社の倒産により、現在は絶版です。

凍結版（角川書店刊）

「Kamui Collection」の一部として、2000年から2001年にかけて全15巻が発売されました。巻末には製作にまつわる裏話やキャラクターの設定などのおまけページが収録されています。表紙は描き下ろしで、1巻のほとんどの顔が加筆修正され、2巻以降も顔を中心に修正が加えられています。ベタ漏れやスクリーントーン剥がれといった修正も行われました。「凍結版」という名前には、今後ネームの変更も加筆修正も行わないという意図が込められています。

あらすじ

紀元3世紀頃、倭の中心都市であった邪馬台国は、女王・卑弥呼を擁立し、魏の国から帯方軍塞曹掾史（外交官）として迎えられた張政を中心に、新たな時代を迎えようとしていました。邪馬台国の近く、熊木山に住む孤児のライカ、オタジ、ウツキの三羽烏は、ある日山の中で不思議な少女・壱与と出会います。壱与は、邪馬台国の次期女王候補の巫女でした。この出会いは、ライカに「国」というもののあり方を強く意識させるきっかけとなります。

その後、国に魅せられたライカは邪馬台国へ侵入しますが、張政たちの策略にはまり、女王卑弥呼殺しの罪を着せられてしまいます。卑弥呼を暗殺した張政は、魏の権威を利用し、自分に抵抗する力を持たない壱与を女王に即位させることで、邪馬台国を支配し、魏の属国にしようと企んでいたのです。

徐々に明らかになる張政の陰謀。壱与を中心とした張政とライカたちの戦いは、隣国をも巻き込む大きな戦いへと発展していきます。

登場人物

熊鬼山

邪馬台国近辺の山で、現在の八女市熊渡山にあたります。老師とライカをはじめとする孤児たちがひっそりと暮らしています。

老師

熊鬼山に住む神仙術の達人。孤児たちを集めて育て、神仙術を教えています。神仙術だけでなく、様々な事柄にも精通しています。山を下りようとするライカたちと対立しますが、ライカの出自を知っており、彼らが山を出やすいように手助けをしていたようです。その後も陰に日向にライカたちを助け、帯方郡で張政の企みを突き止めて急遽邪馬台国へ戻りますが、ライカを庇って命を落とします。死の間際、地の龍となった張政に勝つため、ライカに「天の龍」を呼び覚ます方法を壱与に託しました。

ライカ

本作の主人公。壱与に惹かれ、彼女を助けようとするうちに、邪馬台国という国そのものに興味を持ち始めます。三人のリーダー格で、自己主張が強い性格です。優れた神仙術の使い手で、あらゆる技を使いこなします。雷の鳴る雨の夜、産着に包まれ捨てられているところを老師に拾われ育てられました。真っ直ぐに伸びた極度のクセ毛で、本気で怒ると髪が逆立つため、敵にはカミナリ頭の小童と呼ばれることもあります。
ライカ、オタジ、ウツキの三人は“熊鬼山の三羽烏”と名乗ることがあります。

オタジ

ライカの幼馴染の孤児。神仙術の使い手。一時の感情に流されやすく、それが危機を招くこともありますが、明朗快活な性格です。物語序盤で左腕を失いますが、それをハンデとしない実力を持っています。

ウツキ

ライカの幼馴染の孤児。神仙術の使い手。冷静沈着で、ライカの良き相談相手です。ライカの生き方に彼の器の大きさを見出し、彼についていくことを決意し、共に山を降ります。狗奴国でオタジをかばい捕まった時にキジノヒコによって拷問を受け視力を失いますが、その後の修練により、聴覚や嗅覚が研ぎ澄まされ、戦うこともできるようになりました。

カマキ

熊鬼山の孤児の1人。ライカたちと同年代ですが、つるむことは少なかったようで、山を下りると言い出した3人に反発します。老師が張政を調べるために海を渡るのにも同行しました。張政との戦いが終わった後、ライカたちが戦死者を弔っている場に孤児たちを連れて現れ、花を手向けます。

邪馬台国

二十以上の国からなる倭国で最も巨大な連合国家。既に魏国に認められ金印を有しています。女王卑弥呼を中心に政治が行われ、魏国の人間・知識・技術をとりいれ更なる発展を目指している国です。なお、本作品中では邪馬台国の位置については現在の甘木市付近としています。

卑弥呼（ひみこ）

邪馬台国の女王で巫女。老齢で病を患っており、徐々に弱っていました。自分より能力のある壱与に嫉妬しています。張政の計画のために殺されます。終盤、儀式の為にイキナメによってミイラ状態で蘇ります。

壱与（いよ）

巫女で卑弥呼の後を継ぐ邪馬台国の次期女王。卑弥呼を越える巫女としての力を持っており卑弥呼に嫉妬されていました。巫女の術や仲間の危機を感じ取る能力、傷を癒す力を持つが、他に気による攻撃（発頸）も持っています。邪馬台国の人間全てに平等に接する心優しい人物。張政の手に捕まり利用されます。

魏国

張政（ちょうせい）

魏国から邪馬台国に派遣され、帯方軍塞曹掾史に就任した。自分の地位を用い内部の役職から徐々に魏の人間で固めることで邪馬台国を魏国の属国にするよう命じられていたが、それすらを上回る陰謀を企てている。高い身体能力、神仙術、強力な発頸を持ち、陰謀を妨げるライカ達を屠ろうとする。

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