雷銀

雷銀（らいぎん）について

雷銀（Fulminating Silver）は、化学式Ag₃N（窒化銀）とAgNH₂（銀アミド）の混合物であり、その外見は黒色の結晶です。時には、窒化銀そのものを指すこともありますが、黒色の結晶としての雷銀は、非常に外部刺激に敏感であり、ちょっとした摩擦でも爆発を引き起こす恐れがあります。このため、物性についてはほとんど知られていませんが、その危険性に対しては十分な認識が必要です。

特に「ベルトレーの雷銀」として知られる雷銀は、化学反応から意図的に生成されることがありますが、その際の取り扱いには十分な配慮が求められます。

合成方法

雷銀は、硝酸銀（AgNO₃）と液体アンモニア（NH₃）を反応させることで生成されます。具体的には、濃硝酸銀水溶液に濃アンモニア水を少しずつ加え、その過程で生じた褐色の沈殿が完全に溶けるまでアンモニア水を追加します。この時、懸念すべきは、生成された溶液の表面に黒っぽい膜が形成される点です。この膜は窒化銀を含んでおり、膜が破れると瞬時に爆発する可能性があります。このため、雷銀を安全に取り出すことは非常に困難です。

事故の事例

雷銀に関連する事故は実際に報告されています。特に学校での銀鏡反応の実験中に、雷銀が生成され、爆発する事例が確認されています。これは反応過程において予期せずに雷銀が生じることによるものです。こうした事故を未然に防ぐためには、生成された廃液や銀鏡に酸を加えて酸性にする、もしくは塩化ナトリウム水溶液を加えて塩化銀に転換するなどの方法が推奨されています。これにより、反応の危険性を減少させることが可能です。

関連項目

雷銀に関連した他の化合物としてはアジ化銀や雷酸銀が挙げられます。また、トレンス試薬における銀鏡反応では、硝酸銀とアンモニアが混合されるため、意図せずに雷銀が生成されることがありますので、特に注意が必要です。

脚注

さらなる情報については、松永猛裕著の『火薬のはなし』（講談社・ブルーバックス、2014年）を参照すると良いでしょう。この書籍の91ページから93ページにかけて、雷銀に関する詳細が記載されています。

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