雷電廿六木橋

雷電廿六木橋：秩父地方に現れた、ダム建設と一体となった景観デザイン

雷電廿六木橋は、埼玉県秩父市大滝の国道140号と埼玉県道210号中津川三峰口停車場線に架かる2つの橋梁からなるループ橋です。滝沢ダム建設に伴う国道140号の付け替え工事で、約120mの高低差が生じたため、その接続を目的として建設されました。1996年に着工、1998年に竣工したこの橋は、単なる交通路としての機能を超え、景観と技術が融合したランドマークとなっています。

設計と構造：2つの橋梁と一体感のあるループデザイン

雷電廿六木橋は、ループの中間部を山の斜面を削って造成した路盤でつなぐことで、大滝大橋と廿六木大橋という2つの橋梁から構成されています。しかし、全体としては滑らかな曲線を描く1つのループに見えるよう、デザインに工夫が凝らされています。

大滝大橋は全長345m、最大支間長125mのPCラーメン橋で、滝沢ダム側から下りてくる際に最初に通る橋です。一方、廿六木大橋は全長270m、最大支間長75mのPCラーメン橋で、中間部より低い標高に位置し、滝沢ダムに近い上流側にあります。それぞれの橋梁は直線的な構造を持ち、中間部のカーブによって美しく接続されています。

デザインへのこだわり：環境と安全性を両立

雷電廿六木橋の設計においては、単なる機能性だけでなく、景観への配慮が強く意識されました。時間の経過とともに発生する雨水などによるコンクリートの汚れを、汚れる場所と汚れない場所を意図的に設計することで、デザインの一部として取り込むというユニークな試みが行われています。また、夜間の安全性と環境への配慮を両立するため、低照度の街路灯が橋の側壁に埋め込まれています。

展望スペースと周辺環境：ダムと集落の歴史を繋ぐ

ループ橋の中間部には、駐車場と公衆便所を備えた展望スペース「廿六木望郷広場」が設けられています。ここからは、ループ橋全体と滝沢ダムの雄大な景色を一望できます。ループ最上部にも小規模な展望台があり、異なる視点から景観を楽しむことができます。廿六木望郷広場には、橋梁の解説と共に、道路付け替えにより移転を余儀なくされた廿六木集落の歴史に関する説明板も設置されています。

名称の由来：伝説と集落の歴史を継承

橋の名称「雷電」は、秩父地方に伝わる「でえだんぼう」伝説を基にした物語『雷電坊物語』（1998年創作）に由来します。一方、「廿六木」は、道路付け替えにより移転した廿六木集落の名にちなみます。この名称は、地域の記憶と歴史を未来へ繋ぐ象徴となっています。

受賞歴：技術とデザインの融合が高く評価

雷電廿六木橋は、その優れた技術とデザインが数々の賞を受賞しています。1999年には土木学会田中賞（作品部門）、プレストレストコンクリート技術協会作品賞、グッドデザイン賞を受賞。さらに、大成建設の技術者は、橋梁の意匠設計を担当した功績により日本コンクリート工学協会賞（作品部門）を受賞しました。

その他：橋カードと関連情報

埼玉県が発行する雷電廿六木橋の橋カードは、道の駅大滝温泉で配布されています。橋の写真やデータが記されたこのカードは、橋を訪れた人々にとって貴重な記念品となっています。

雷電廿六木橋は、単なる橋梁を超えた存在です。ダム建設という土木事業と一体となり、景観デザイン、地域の歴史、そして最先端の技術が融合した、まさに現代のランドマークと言えるでしょう。その存在は、訪れる人々に、技術と自然の調和、そして歴史と未来が重なり合う感動を与えてくれます。

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