雷鳴の湾

雷鳴の湾：ルイジアナ州の海と人間のドラマ

1953年、アメリカで公開された『雷鳴の湾』(原題:Thunder Bay)は、アーロン・ローゼンバーグ製作、アンソニー・マン監督によるアドベンチャードラマ映画です。美しいルイジアナ州の港町を舞台に、海底油田開発という近代的な産業と、伝統的な漁業という生活様式との衝突が、手に汗握る展開で描かれています。

豪華キャストと迫力の映像

主演は、ハリウッド黄金期のスター、ジェームズ・ステュアート。油田開発の技術者スティーヴ・マーティンを、確かな演技力で演じ切っています。ヒロインのステラ・リゴウ役にはジョアン・ドルー。他にも、ギルバート・ローランド、ダン・デュリエといった実力派俳優が脇を固め、作品に深みを与えています。

本作は、当時としては革新的なテクニカラー作品であり、特に35mmフルサイズのフィルムを使用し、公開時には1.85：1のアスペクト比のアナモルフィック・ワイドスクリーンで上映されました。さらに、ユニバーサル社として初めてステレオ録音を採用した点も特筆すべきでしょう。当初は3Dでの撮影も計画されていましたが、残念ながら実現には至りませんでした。

ルイジアナ州での撮影と撮影秘話

映画のロケ地は、ルイジアナ州モーガン・シティ。メキシコ湾の掘削船のシーンはニューオーリンズで撮影されました。現地での撮影は困難を極め、ダン・デュリエはタグボートから滑落し、肋骨骨折と打撲を負うアクシデントに見舞われました。しかし、彼は僅か1、2日の休養で撮影に復帰するなど、並々ならぬ熱意を見せています。

公開と評価

『雷鳴の湾』は1953年9月19日、ニューヨークのロウズ・ステート・シアターで盛大にプレミア上映されました。ワイドスクリーンとステレオサウンドという当時としては最先端の技術が駆使された本作は、初日だけで4万2千ドルという驚異的な興行収入を記録。ロウズ・ステート・シアターで上映されたユニバーサル作品の中でも最高の数字となりました。

しかし、そのステレオサウンドについては、スピーカー3つを使用したシステムがうるさすぎるという意見もあったようです。映画の内容については概ね好評で、ルイジアナの美しい自然と人間ドラマが見事に融合した作品として高い評価を得ています。

登場人物たち

物語の中心となるのは、海底油田開発という野心的な計画を進める技術者スティーブと、代々エビ漁を営むリゴウ一家との対立です。それぞれの立場、それぞれの思惑が複雑に絡み合い、物語に緊張感を与えています。ステラの妹フランチェスカとその許嫁フィリップ、そして漁師たちのリーダー的存在であるテッシュなど、個性豊かな登場人物たちが、物語に彩りを添えています。

現代にも通じるテーマ

『雷鳴の湾』は単なる娯楽作品ではありません。近代化と伝統、開発と自然保護、利潤追求と生活の維持といった、現代社会でも重要なテーマが描かれています。それぞれの立場の違い、そしてそれぞれの正義がぶつかり合う様は、観る者に多くのことを考えさせます。

数々の困難を乗り越えて制作された『雷鳴の湾』。その迫力ある映像、豪華なキャスト、そして現代にも通じる普遍的なテーマは、今もなお多くの観客を魅了し続けているのです。

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