電信八号

電信八号



電信八号（でんしんはちごう）は、電八倶楽部および電八開発倶楽部が開発した、Microsoft Windows上で動作する電子メールクライアントです。「八号」は漢数字で表記され、「電八」と略されることもあります。1995年に石岡隆光氏によって最初のバージョンがリリースされ、その後、開発が電八倶楽部へと引き継がれました。

歴史



初期開発



1995年9月頃、石岡隆光氏がWindows 3.1向け（16ビット版）の電子メールクライアントとして電信八号の最初のバージョンをリリースしました。翌1996年にはWindows 95向け（32ビット版）が登場しました。しかし、1998年頃には開発者のモチベーションが低下し、開発は事実上停止状態となりました。

開発の引き継ぎ



ソフトウェアの継続的な発展を望んだ川瀬裕氏が、石岡氏にソースコードの公開を依頼し、1999年7月13日にソースコードの提供を受けました。これにより、開発は川瀬氏が主宰する電八倶楽部および電八開発倶楽部に引き継がれました。同時に、改変権と再配布権がライセンスされ、電信八号オフィシャルサイトが立ち上げられました。

現在の状況



2000年代前半までは活発な活動が見られましたが、その後は数年に一度程度のリリースにとどまっています。2021年10月には7年ぶりのリリースがありましたが、配布に用いられたLZH形式ファイルは、セキュリティ上の理由から多くのブラウザで廃止されているftpプロトコルを使用しており、また同梱されているOpenSSLも2023年にサポートが終了し、脆弱性が見つかるなど、課題も残されています。

リリース情報



バージョン表記



16ビット版は「1.7b1」のように表記され、32ビット版は「321.0b2」のように先頭に「32」が付きます。電八倶楽部への移行後は、「32.1.3.1」のように「.」で区切る表記に変わりました。

リリース履歴



  • - 1995年9月または10月頃: 最初のバージョンがAsahiネットのソフトウェア掲示板に投稿されました。
  • - 1996年1月16日: 最初の32ビット版となるVersion 321.0b1がリリースされました。
  • - 1996年7月23日: Version 1.9b1がリリースされ、16ビット版の最後のリリースとなりました。
  • - 1997年8月2日: Version 321.1b7がリリースされ、石岡氏による最後の正式版となりました。
  • - 1998年5月3日: 開発室版 Version 321.2b5がリリースされ、石岡氏による最後のリリースとなりました。
  • - 1999年7月13日: 開発が電八倶楽部に移管されました。
  • - 2000年3月31日: V321.2b6-stable がリリースされ、電八倶楽部としての最初の正式版となりました。
  • - 2000年4月16日: Vectorに登録されました。
  • - 2021年10月10日: Version 32.1.7.5がリリースされ、32ビット版の最新リリースとなりました。

評価



受賞歴



  • - 1996年: 第5回フリーソフトウェア大賞に入賞しました。

シェア



  • - 1998年3月頃: 0.9% (iMi調べ)
  • - 2001年3月頃: 0.2% (iMi調べ)
  • - 2003年6月頃: 1.7% (IT Pro調べ)

ダウンロード数



  • - 2001年リリースのV32.1.3.1 sp2: 延べ125,016回 (公式サイト77,505回、Vector47,511回)
  • - 2014年リリースのV32.1.7.3: 延べ9,014回 (公式サイトのみ)

機能・特徴



  • - 送信プロトコル: SMTP、POP before SMTP、SMTP-AUTH、SMTPS (Windows 7以降のみ)に対応しています。
  • - 受信プロトコル: POP3、APOP、POP3S (Windows 7以降のみ)に対応しています。IMAP4やLDAPには非対応です。
  • - プラグイン: 外部ソフトのプラグインを利用することで、本体にない機能を拡張できます。
  • - メール保存: 受信したメールはテキストファイルとして指定フォルダに保存され、テキストエディタで閲覧できます。HTMLメールは添付ファイルとして扱われます。
  • - ファイル形式: 1メール1ファイル形式で記録するため、HDDのクラスターサイズによってディスク占有サイズが大きくなるという特徴があります。初期には問題視されていましたが、HDDの大容量化により解消されました。
  • - サーバープレビュー: 受信前にサーバー上のメール一覧を確認し、送信元や件名を確認してから受信・削除できます。
  • - 自動振り分け: 正規表現によるメールの自動振り分け機能があります。
  • - テンプレート: メール作成時、正規表現を用いて宛先に応じたメールテンプレートを自動選択できます。
  • - MIMEタイプ: MIMEのContent-Typeに対応する処理を電信八号側で設定でき、レジストリ改竄による不要なアプリ起動を抑制できます。
  • - 多言語対応: 多言語対応は十分ではなく、メールリスト表示は日本語（Shift_JIS）の範囲でしか行えません。

脚注



  • - 電信八号は、過去の技術やプロトコルを使用しているため、現代のセキュリティ基準に適合していない場合があります。利用の際は注意が必要です。

関連項目




外部リンク



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