電子ニュートリノ

電子ニュートリノとは

電子ニュートリノは、素粒子標準模型における第一世代のニュートリノであり、レプトンの三世代構造において、同じく第一世代の荷電レプトンである電子と対をなす粒子です。このため、電子ニュートリノと名付けられました。

予測

20世紀初頭、ベータ崩壊によって特定のエネルギーを持つ電子が放出されるという理論が提唱されました。しかし、1914年にジェームズ・チャドウィックは、放出される電子のエネルギーが連続的なスペクトルを持つことを実験的に示しました。この結果は、従来の理論と矛盾していました。

1930年、ヴォルフガング・パウリは、この矛盾を説明するために、未発見の粒子がエネルギー、運動量、角運動量を持ち去っているという画期的な理論を提唱しました。パウリは、この粒子が電荷を持たず、質量が非常に小さいか、あるいはゼロであると考えました。

同年12月4日、パウリはチューリッヒの連邦工科大学物理学研究所に宛てて有名な手紙を送り、その中でベータ崩壊における連続スペクトルの問題を解決するために、電子ニュートリノの存在を提案しました。この手紙は、電子ニュートリノの概念が最初に示された重要な文書であり、その全文はPhysics Today誌の1978年9月号に掲載されています。

発見

1942年、王淦昌によってベータ崩壊で放出されるニュートリノを検出する装置が初めて考案されました。そして、1956年にフレデリック・ライネスとクライド・カワンが、原子炉から放出されるニュートリノを捉えることに成功しました。この業績により、フレデリック・ライネスは1995年にノーベル物理学賞を受賞しました。

命名

パウリは当初、この粒子をニュートロン（neutron）と名付けました。しかし、1932年にジェームズ・チャドウィックがより重い核粒子を発見し、それを中性子（neutron）と名付けたため、同じ名前を持つ二つの粒子が存在することになりました。

そこで、ベータ崩壊の理論を発展させたエンリコ・フェルミは、1934年にニュートリノという新しい言葉を作り、この問題を解決しました。この言葉はイタリア語で「小さい中性子」を意味します。

その後、二つ目のニュートリノの存在が予測・発見されると、ニュートリノの種類を区別する必要が出てきました。現在では、パウリが提唱したニュートリノは電子ニュートリノと呼ばれ、二つ目のニュートリノはミューニュートリノと呼ばれています。しかし、歴史的な経緯から、単にニュートリノと言った場合には、電子ニュートリノを指すことが多いです。

脚注

出典

F. Reines, C.L. Cowan, Jr. (1956). “The Neutrino”. Nature 178: 446. doi:10.1038/178446a0.
C.L. Cowan, Jr., F. Reines, F.B. Harrison, H.W. Kruse, A.D. McGuire (1956). “Detection of the Free Neutrino: A Confirmation”. Science 124: 103. doi:10.1126/science.124.3212.103.

関連項目

ミューニュートリノ
タウニュートリノ
ニュートリノ検出器
* カムランド

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