震災復興土地区画整理事業

震災復興土地区画整理事業

震災復興土地区画整理事業とは、大規模な地震などによる壊滅的な被害を受けた市街地において、その復旧・復興を迅速に進めるとともに、将来の災害に備えた安全性の高い街づくりを実現することを目的とした特別の土地区画整理事業です。正式には「被災市街地復興土地区画整理事業」とも呼ばれます。

この事業は、通常の土地区画整理事業が都市機能の更新や整備を長期的な視点で行うのに対し、災害からの「緊急的な復興」と「防災性の向上」に特化している点が大きな特徴です。被災した土地は、建物の倒壊や火災延焼、津波などにより、土地の境界が不明確になったり、道路やライフラインといった都市基盤が寸断されたりしています。また、復興にあたっては、避難路となる道路の拡幅や、延焼を防ぐための公園・緑地の確保、安全な宅地の再配置といった防災的な観点からの都市基盤再整備が不可欠となります。

震災復興土地区画整理事業では、被災した区域全体の土地を一度集約し、計画に基づき道路、公園、下水道などの公共施設用地を確保しながら、残りの土地を従前の権利に応じて再配置（換地）します。これにより、不整形の土地が整形され、建築しやすい宅地が生まれるとともに、災害に強く、利便性の高い街の骨格が形成されます。

特に、東日本大震災のような広範囲かつ甚大な被害をもたらした災害からの復興において、この事業は極めて重要な役割を果たしました。津波により沿岸部が壊滅した地域では、居住地の安全を確保するため、高台への移転や、かさ上げされた土地への宅地整備が求められました。震災復興土地区画整理事業は、こうした高台移転先の土地を整備したり、被災市街地内で住宅再建が可能なエリアの土地利用を再編したりする上で中心的な手法となりました。

東日本大震災からの復興事例としては、福島県いわき市の沿岸部で実施された事業が挙げられます。津波により大きな被害を受けた豊間地区および薄磯地区では、本事業が適用されました。

いわき市 豊間地区: 約55.9ヘクタールの事業区域で、約1,420人の計画人口を想定し、2012年度から2018年度にかけて事業が進められました。
いわき市 薄磯地区: 約37.0ヘクタールの事業区域で、約864人の計画人口を想定し、2012年度から2017年度にかけて事業が進められました。

これらの地区では、本事業によって安全な高台などへの住宅移転が進められたほか、防災機能を持った公共施設が整備され、地域コミュニティの再建に向けた基盤が築かれました。

震災復興土地区画整理事業は、単に土地の区画を整理するだけでなく、被災した人々の生活再建を支え、将来にわたって安心して暮らせる、より災害に強い持続可能な街を創造するための強力な手段と言えます。その実施にあたっては、被災住民との合意形成や、事業資金の確保など、様々な課題を克服する必要がありますが、甚大な被害からの復旧・復興プロセスにおいて、その重要性は非常に高いと言えます。

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