霊術

霊術の歴史と実態

霊術（れいじゅつ）は、明治末から昭和初期にかけて日本で大規模に普及した民間療法の一種です。この現象は、海外から導入された催眠術や心霊学、心理学などと、日本の修験道や呪術文化が融合することで誕生しました。霊術の分野は「霊界」と称され、多くの実践者が現れました。

井村宏次は、霊術を「おのれの思いを遂げるために、外側からの圧力を超常的な方法で打破するテクニックの集合体」と説明しています。霊術家たちは、明治30年代から活動を始め、昭和5年にはその数が約3万人に達しました。この流れは、今の日本の新宗教の素地ともなっており、手かざしや指圧、カイロプラクティックなどの手技療法の中にもその影響が見受けられます。

明治維新の際、海外の知識が急速に日本に流入しました。そのなかには催眠術や心霊主義、さらにはマジックのショーなども含まれていました。特に催眠術は、日本の呪術的な伝統に強い影響を与えました。かつての呪術は、近代になるにつれて柔らかくなり、幕末には三大民衆宗教（黒住教、天理教、金光教）が大衆化を遂げたことで呪術性が薄まっていました。催眠術は、民間ルートで流入し、見世物的な要素を持ちつつ全国的なブームとなりました。

民衆は、催眠療法を通じて日常の苦痛に対する「呪力」を期待しました。霊術は、西洋の医学には足りない部分を補完する役割を果たし、大正期には当局から黙認されていました。特に精神病の治療においては限界があったため、霊術や精神療法のニーズが高まりました。

ただし、催眠術は悪用される危険性も孕んでいました。女性に対する犯罪行為や子供の視力低下などの問題が発生し、明治42年には催眠術の乱用を防ぐための法律が制定されました。しかし、その効果は不十分で、専門の催眠術師たちは戦略を変えて「霊術」や「精神療法」と名乗り、当局の目を逃れました。

霊術の先駆者たちには、浜田熊嶽（気合い術師）、桑原天然（精神学者）、田中守平（太霊道の創始者）がいました。彼らの技術は広まり、昭和期には霊術が最も盛況を極めました。井村によると、この時代の非合理医術は、療術、霊術（精神療法を含む）、そして両者を併用するグループに分けられます。霊術業界は大衆の支持を背景に公認を求めましたが、政府はブームを抑制する目的で法律を制定しました。

その後、戦後のGHQの影響で霊術は禁止され、徐々にその存在は消えていきました。一方、井村はアメリカへ渡り発展したレイキなどが霊術にルーツを持つことを指摘しています。レイキは日本に再輸入され、現在も多くの人々によって実践されています。

治療法の多様性

井村は、霊術家が用いる治療法を以下に分類しています。

• - 霊術系（気合術、霊動術など）38%
• - 療術系（指圧、カイロプラクティックなど）21%
• - 精神療法系（暗示、催眠など）23%
• - 心霊系霊術（心霊治療など）7%
• - その他の療法（断食、体操など）2%

このように、霊術は多様な治療法を融合させながら進化し、日本の医療文化に影響を与え続けました。

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