霧の山荘

霧の山荘（きりのさんそう）

『霧の山荘』は、横溝正史が手がけた中編推理小説であり、著名な金田一耕助シリーズの一作です。本作は、1958年に発表された短編『霧の別荘』の改稿を果たし、1961年に中編として再構築されました。その後、作品は角川文庫『悪魔の降誕祭』に収められています。本書では、人間の心理や動機が絡み合う死体消失の劇的な謎が描かれています。

あらすじ

物語は1958年9月から始まります。K高原のPホテルに滞在していた私立探偵・金田一耕助は、江馬容子という女性からの不安な依頼を受け、彼女の伯母である元映画スター・西田照子との面会を試みることになります。容子の伯母は、30年前に発生した未解決の事件に関する情報を有していると主張し、その不安を解消するために金田一を呼び寄せました。

照子の別荘へ向かう金田一ですが、途中で道に迷ってしまい、そこで出会ったアロハ姿の男が照子の使いとして彼を導きます。しかし、別荘につくと戸締りがされており、中から音が聞こえません。金田一が中をのぞこうとすると、赤黒い液体に染まった浴衣姿の照子が倒れている姿を発見します。アロハの男が怪我をしたと主張し、金田一は管理人と警察を呼ぶことにしますが、戻ると照子と男は共に消えていました。

翌日、K署の岡田警部補から、照子の死体が発見されたとの連絡が入ります。金田一と探偵仲間の等々力警部は急いで別荘へ戻り、そこで照子の死体を発見。彼女の死はさらなる謎を呼び起こすことになります。事件の進展が重要な鍵となり、金田一は過去の未解決事件との関連を探りながら真相に迫っていくことになります。

原型短編との違い

この作品は、元となる短編『霧の別荘』から多くの要素が加筆・修正されています。短編版では照子の死体の再出現を金田一が解決する形にとどまり、事件は完全には解決されませんでした。しかし、長編版では事件の解決に向けた明確な展開が描かれ、キャラクターの背景や動機がより詳細に描写されており、ストーリーは充実しています。

登場人物

• - 金田一耕助：物語の中心となる私立探偵。
• - 等々力大志：警視庁の警部。
• - 西田照子：元映画スター。
• - 江馬容子：照子の姪にあたる雑誌記者。
• - 岡田警部補：捜査を担当するK署の警部。

追考

金田一シリーズにおいては、舞台が抽象的な形で表現されることが多く、本作でも「K高原」は軽井沢、「Pホテル」はプリンスホテルを指しているとされています。これらの地名は、横溝正史の独特のスタイルを反映しており、ファンに愛される要素の一つです。物語の舞台やキャラクターが緻密に描かれ、深いミステリー体験が提供されています。読者は、金田一とともに謎に挑む感覚を味わうことができるでしょう。

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