霧の浮舟

霧の浮舟

概要

「霧の浮舟（きりのうきぶね）」は、日本の大手菓子メーカーである株式会社ロッテが製造・販売していたチョコレート製品です。その歴史は古く、初めて市場に登場したのは1980年の10月でした。このチョコレートの最大の特徴は、その名が示すように、まるで空気を抱き込んだかのような軽やかな食感を生み出すエアインチョコレートである点にあります。独特の構造と口溶けで、多くの消費者に親しまれました。

特徴的な食感

「霧の浮舟」は、その内部にたっぷりと空気が含まれていることから、「エアインチョコレート」というカテゴリーに属します。これにより、一般的な板チョコレートと比較して、非常に軽く、口の中で「シュワシュワ」あるいは「フワフワ」といった表現がされる独特の食感が楽しめます。溶ける際に空気が弾けるような感覚や、滑らかなチョコレートでありながら軽快な歯触りがある点が、他のチョコレート製品との明確な差別化となり、発売当時から多くの消費者に新鮮な驚きと美味しさを提供しました。

波乱の販売史

このチョコレートの販売史は、決して平坦なものではありませんでした。発売から四半世紀が経った2005年、ロッテは新たなエアインチョコレート製品として「エアーズ」を市場に投入します。これに伴い、「霧の浮舟」はその役目を終えるかのように、一度生産が終了となりました。長年にわたり親しまれてきた製品の終売は、当時の愛好家たちにとって少なからぬ衝撃を与えたことでしょう。

しかし、「霧の浮舟」への想いは多くの人々の心に残り続けました。その独特な食感と味わいを再び楽しみたいという復刻を望む声が、熱心な愛好家たちを中心に高まっていきました。こうした根強い要望に応える形で、ロッテは2009年4月に「霧の浮舟」の期間限定での復活を決定します。この一時的な再販は、再び多くのファンを喜ばせるとともに、その人気の根強さを改めて証明するものとなりました。

期間限定での復活が好評を博したことを受け、ロッテはさらなる決断を下します。2013年2月からは、「完全復活」として、「霧の浮舟」を再びレギュラー商品としてラインアップに加えることになったのです。これにより、かつてのファンはもちろん、新たにその存在を知った人々も、いつでもその独特の食感を味わうことができるようになりました。

再び終売へ

本格的なレギュラー商品としての復活を果たし、順調に販売が続けられていた「霧の浮舟」でしたが、残念ながらその旅路は永遠ではありませんでした。2018年2月、ロッテは再びこの製品の販売を停止することを発表しました。この時をもって、「霧の浮舟」は再び市場からその姿を消すこととなりました。

まとめ

「霧の浮舟」は、1980年の誕生から2018年の終売までの間、一度は生産終了となりながらも、ファンの熱い声に応えて二度の復活を遂げたという、類まれなる販売履歴を持つチョコレートです。その最大の魅力であるエアインチョコレートならではの軽やかな食感は、多くの人々の記憶に深く刻まれています。短命であった期間も合わせると、その存在感は決して小さなものではなく、日本のチョコレート史において、記憶に残る名品の一つとして語り継がれていくことでしょう。

もう一度検索