露出症

露出症：歴史、心理、医学、そして治療

露出症は、自分の性器などを知らない人に露出し、性的興奮を得る性的倒錯です。かつては「露出狂」と呼ばれ、DSM-5では「露出障害」と診断名が変わっています。本稿では、露出症の歴史、心理的側面、医学的定義、診断、そして治療法について詳しく解説します。

歴史

露出行為は古くから存在しました。古代メソポタミアの都市遺跡からは、「姫神」の像が見つかり、神殿で奉納されていたと考えられています。紀元前5世紀には、古代ギリシャの歴史家ヘロドトスが、女性が公然と体を露出する行為を記録しています。これは宗教儀式の一環であった可能性も示唆されています。1550年にはベニスで、公然わいせつ行為に関する報告書に、臨床的な意味での露出症の記述が登場しています。イギリスでは1824年、浮浪者法の改定で「公然とわいせつに性器を露出する」行為が犯罪として明記されました。近年では、スマートフォンの普及により、ヌード写真や動画の共有が容易になり、自己顕示欲を満たす手段として露出行為が増加傾向にあるという指摘もあります。

心理学的側面

「露出症患者」という用語は、1877年にフランスの精神科医シャルル・ラセーグによって初めて用いられました。しかし、生殖器の露出に関する法廷記録はそれ以前から存在しています。DSM-5では、他者の同意なく、生活の質や社会機能を妨げる場合に、露出症的関心が精神障害として診断されます。男性では2～4％、女性ではより低い割合で発症するとされています。スウェーデンの調査では、見知らぬ人への性器露出で性的興奮を覚える人は、女性で2.1％、男性で4.1％という結果が出ています。

185人の露出症患者を対象とした調査では、露出行為に対する反応として「性的関係を望む」（35％）が最も多く、「無反応を望む」（19％）、「相手にも露出してほしい」（15.1％）、「賞賛を望む」（14.1％）、「何らかの反応を望む」（11.9％）と続きます。「怒りや嫌悪」は3.8％、「恐怖」はわずか0.5％でした。これは、露出行為の目的が必ずしも他人に不快感を与えることではないことを示唆しています。

医学的定義と診断

露出症は精神医学的な障害です。DSM-IV-TRでは、以下の2点を満たす場合に診断されます。

1. 少なくとも6ヶ月間、警戒していない見知らぬ人に自分の性器を露出することに関する空想、性的衝動、または行動が反復する。
2. その性的衝動や行動によって著しい苦痛や対人関係上の困難が生じている、または行動化している。

重要なのは、著しい苦痛や社会生活への支障がない場合、または具体的な行動に出ていない場合は、精神障害とはみなされないことです。単なる妄想や、露出をテーマにしたアダルトビデオの収集などは、6ヶ月以上継続しても精神障害とは診断されません。ただし、法律に違反する行為は犯罪となります。

治療

治療法としては、「嫌悪条件付け」が一般的です。これは、露出行為による逮捕などの社会的不利益を理解させることで、行動を抑制する方法です。薬物療法では、SSRIなどが用いられますが、効果不十分な場合は、テストステロンを抑制するホルモン療法が検討されます。露出症は、適切な治療によって改善が見込める疾患です。専門家への相談が重要です。

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