露朝密約事件

露朝密約事件について

露朝密約事件は、19世紀末に朝鮮政府が帝政ロシアとの間で進めた秘密交渉のことを指します。これは、当時の朝鮮が、清や日本、さらにはイギリスの圧力から逃れるための手段としてロシアの軍事的支援と保護を求めた一連の出来事です。この事件には、1885年と1886年に発生した二回の密約が含まれています。

第一次露朝密約事件

最初の露朝密約事件は、1885年に発生しました。この取引は、朝鮮政府の外務協辦であったパウル・ゲオルク・フォン・メレンドルフの主導により進められました。メレンドルフは、朝鮮の不凍港の租借を対価に、朝鮮の保護や軍事教官団の招聘を考えました。ロシア側もこれに応じる意向を示し、駐日公使館の書記官シュペイエルが漢城に派遣されました。しかし、朝鮮政府内では意見の相違が生じ、また清国当局の反発もあったため、密約は成立しませんでした。

メレンドルフの進めた交渉は、清国の影響力を維持しようとする動きと対立しており、そのため彼は周囲から背信行為として見なされ、最終的に失脚しました。この経緯の中で、朝鮮国王は独自にロシアに密使を派遣しましたが、ロシア側は保護の約束をすることはありませんでした。

第二次露朝密約事件

次に、1886年に発生した第二次露朝密約事件が挙げられます。この事件では、朝鮮政府が在漢城ロシア代理公使ウェーバーに対して、第三国との紛争が発生した場合にロシアに軍事的支援を求める密函を送ったことが発覚し、国際問題に発展しました。当時、朝鮮政府内には清国の圧力に対抗するためにロシアを引き込もうとする動きがありました。しかし、この計画は閔泳翊によって袁世凱に密告され、清国はこれに対抗する手段を講じることとなりました。

国際問題化したこの事件の終息に向けて、ロシア外務省は密函の受領を認めましたが、高宗による保護要請には応じないことを清国に約束しました。このことにより、露朝間の密約事件は一旦の収束を迎えました。

まとめ

露朝密約事件は、朝鮮が近代国家を目指す中で、周辺国との複雑な関係が浮き彫りになった事例です。清国や日本からの圧力に対抗するための試みは、それぞれの国との利害関係を反映した緊張した状況を生んでいました。結果的に、朝鮮の外交政策は大国に翻弄され、国家の自主性確立へ向けた苦悩を示すものとなったのです。このように、露朝密約事件は当時の東アジアにおける国際情勢を理解する上で重要な鍵となる出来事です。

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