露清密約

露清密約の概要

露清密約、別名カシニー密約や李鴻章－ロバノフ協定は、1896年6月3日にモスクワでロシア帝国と清国の間に結ばれた秘密の条約です。この条約は、日[[清戦争]]や三国干渉を受けた背景のもとで締結されました。双方は、日本に対する共同の防衛を名目として相互援助の約束をしましたが、実際にはロシアが満洲における権益を強化するものでした。条約は日露戦争の根底にある要因の一つとされています。

背景と経緯

この密約の前には、日本から清に対する遼東半島の返還を求める三国干渉がありました。日本による清に対する脅威が高まる中で、ロシアは清国に対し見返りを要求しました。1896年5月、清の実権者であった李鴻章はサンクトペテルブルクを訪れ、皇帝ニコライ2世との謁見を果たします。この際、ロシア側の外務大臣ロバノフと財務大臣ヴィッテとの秘密会談が行われ、李鴻章は50万ルーブルの賄賂を受け取った上で、6月3日に密約を締結しました。

密約の内容

露清密約の主要な内容は以下の通りです。

• - 日本がロシア極東、朝鮮、清に侵攻した際、両国は相互に軍事援助を行うこと。
• - 一方が敵国と和平条約を結ぶ場合、もう一方の同意が必要とすること。
• - 戦時中は清の港湾をロシア海軍に開放すること。
• - 清はロシアが黒竜江省と吉林省を通過し、ウラジオストクへの鉄道を建設することを許可する。
• - 鉄道の建設と運営はロシア側が行うこと。

この密約は15年間の有効期限があり、満期前に双方で再協議が可能とされました。加えて、同年10月には南満洲を縦断する鉄道との接続も認められることとなります。

密約後の影響

露清密約の締結後、ロシアは満洲における優位性をさらに強化しました。ロシアの軍は清国の港や鉄道を自由に利用できる権利を享受し、また治外法権が認められました。これに伴い、ロシアは鉄道に関連する地域の管理権や排他的行政権をも手に入れ、満洲での影響力を拡大しました。

日本側はこの動きを憂慮し、外交的な対立が深まっていきました。ロシアの勢力拡大に対抗するため、日本は軍事力の強化と国際的な合意を模索するようになります。対抗策として1894年から始まる日露戦争への道が開かれることとなります。

日本の反応と日露戦争

露清密約の存在が明るみに出たのは1904年のことです。日本はこの密約の存在を知ると、ロシアの南下を防ぐための手段として日露戦争を決断します。1904年に開戦し、その数ヵ月後には露清密約が清によって破棄されることになります。

このように、露清密約はロシアと清の間で結ばれた一時的な防衛協定でありながら、結果的に日露戦争を引き起こす大きな要因となったことは明白です。ロシアの政治的・経済的・軍事的な支配が満洲を経て日本との緊張を高めたことにより、東アジアにおける力のバランスが変化していく様子が見受けられます。私たちはこの密約がもたらした影響を理解することで、当時の国際情勢をより深く考察することができるでしょう。

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