青春の軌跡

青春の軌跡 (Where I'm Coming From)

スティーヴィー・ワンダーが1971年に発表した『青春の軌跡』は、彼の13枚目となるオリジナルアルバムです。このアルバムは、当時の妻であるシリータ・ライトとの共作によって成り立っています。

背景と制作過程

1970年、スティーヴィー・ワンダーはシリータ・ライトとデトロイトの教会で結婚式を挙げ、新婚旅行から帰った後に彼の長い間の構想を基にアルバム制作を始めました。しかし、彼が抱いていた曲のアイデアは、当時所属していたモータウンからはあまり評価されず、しばしばお蔵入りにされることがありました。これに不満を持ったスティーヴィーは、自身のアルバムプロジェクトに対するクリエイティブなコントロール権を主張します。結果的に、モータウン社長のベリー・ゴーディは彼の意見を受け入れ、制作を自由に進めることを許可しました。

これまでにスティーヴィーは、17曲のヒットシングルの内8曲を自作または共作していました。彼の変革のきっかけには、マーヴィン・ゲイの『ホワッツ・ゴーイン・オン』の成功が影響していたと言われています。しかし、『青春の軌跡』は期待されたほどの評価を得られず、「真実の愛」（愛してくれるなら）を除けば、印象が薄く、忘却されるべき習作とされることがありました。後にスティーヴィー自身もこのアルバムが不十分であったことを認め、「もし適切なプロモーションがあれば」と悔やんでいます。

アルバムの特徴

『青春の軌跡』は、彼が個人的な思いを表現するために作り上げた最初のアルバムであり、音楽や歌詞は1960年代末の生活ならびに彼自身の意見に基づいています。彼はこのアルバムをもってモータウンに対する最後の作品とするつもりでした。アルバム内には、ローランド・カークやスライ・ストーン、エリック・クラプトンといった彼の音楽的影響が色濃く反映されています。
また、アメリカの政治体制についての失望や、歴史的な自由主義の指導者たちの暗殺に対する思いも込められており、その一端はベトナム戦争における兵士たちへの思いやりとして表現されています。特にSide1の「あなたの兵士」は、戦争で犠牲になった兵士に対する深い同情を代表する曲として位置づけられています。

彼は、「時々、僕がベトナムで亡くなった兵士達と代わることができたらと思うこともある」と語っています。

収録曲

このアルバムは、以下のトラックで構成されています：

Side 1

• - ルック・アラウンド (Look Around) – 2:45
• - 気がむくままに (Do Yourself A Favor) – 6:10
• - あなたの兵士 (Think Of Me As Your Soldier) – 3:37
• - 悲しみの中から (Something Out Of The Blue) – 2:59
• - 愛してくれるなら (If You Really Love Me) – 3:00

Side 2

• - 打ち明けたい (I Wanna Talk To You) – 5:18
• - 幸福への道 (Take Up A Course In Happiness) – 3:11
• - 夏に消えた恋 (Never Dreamed You'd Leave In Summer) – 2:53
• - 瞳の中の恋 (Sunshine In Their Eyes) – 6:58

このように『青春の軌跡』は、スティーヴィー・ワンダーの結婚生活や個人的な視点が色濃く反映されたアルバムであり、後の音楽キャリアにおいて重要な意味を持つ作品となりました。

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