青狼記

作品概要

『青狼記』は、日本の作家、楡周平が執筆した小説作品です。2000年に講談社から上下巻構成で刊行され、その後2003年には文庫版としてまとめられました。

また、本作は楡周平自身が脚本を手がけ、長谷川哲也が漫画を担当した同名の漫画作品としても展開されました。この漫画版は『週刊コミックバンチ』において、2003年12月5日号（第121号）から2005年5月6日号（第189号）にかけて連載され、全61話で完結。単行本は全6巻が刊行されています。

ストーリー

物語の舞台は、恒暦471年の仮想の大陸、天行大陸です。この大陸には、東の奉金、北の宋北、西の華漢、南の湖朝、そしてこれらの国々に囲まれるように位置する楽天という、五つの国が存在しています。

楽天は五国の中でも最も国力が弱く、常に他国からの脅威に晒されていますが、巧妙な外交戦略によってその存続を維持してきました。

楽天の存立を支える重要な要素が、自国領内でのみ産出される特殊な鉱物、「溶光石」です。この溶光石は、加工を施すことで驚異的な熱と光を生み出す特性を持っています。楽天は溶光石の流通を厳格に管理し、その希少性と力を利用することで、国力不足を補うと共に、他国に対する強力な外交手段とし、大陸における勢力均衡を保つ要としていました。

物語は、この恒暦471年、楽天の都である伯陽に突如として現れた謎の存在、「青狼」をきっかけに大きく動き出します。楽天を中心とした五国間の複雑な関係や、権謀術数が渦巻く激しい抗争が、作品の主要なテーマとして描かれていきます。

主な登場人物

楽天

荘趙浚（そう ちょうしゅん）: 本作の中心となる人物。楽天の軍師である荘忠英の第一子。文武に長けた才能を持ち、父から名剣「水殻」を譲り受け、また父に代わって帝から栄誉ある「金糸紅衣」を授与されます。
荘忠英（そう ちゅうえい）: 荘趙浚の父であり、楽天の軍師と第一軍将軍を兼任。国家の安定のため、家族と別れ奉金へ人質として赴くことになります。
蔡彷吾（さい ほうご）: 楽天第一軍の副将を務める人物。荘忠英の片腕として尽力していましたが、荘趙浚が「金糸紅衣」を拝命したことで激しい嫉妬心に囚われます。
藩恩泊（はん おんはく）: 荘趙浚に仕える従者。かつては荘忠英の従者でもありました。
紅鈴麗（こう りんれい）: 将軍・紅容煌の娘。荘趙浚に対して秘めた愛情を抱いています。
覇先（は せん）: 楽天の文官の長。自身の権力欲から、荘趙浚を失脚させるための様々な陰謀を企てます。
呉大併（ご たいへい）: 将軍・呉の息子。武学院においては荘趙浚の先輩にあたる存在です。

華漢

史亜夫（し あふ）: 華漢国の間諜組織の頭領を務める人物。卓越した武芸の達人であり、楽天との国境地帯で暗躍します。

奉金

楊春申（よう しゅんしん）: 奉金の軍師。荘忠英との人質交換という形で楽天に滞在することになります。

その他

陶君（とう くん）: 蛮族に属する人物。必殺の武器として「殺腕斧」（さつわんふ）を駆使します。
* 呉楼薫（ご ろうくん）: 蛮地にある「石の都」を統べる大帝。自然の力を利用した無敵の技とされる「龍風波」の使い手です。

単行本情報

漫画版『青狼記』（長谷川哲也/漫画、楡周平/原作・脚本）は、新潮社よりバンチ・コミックスレーベルで全6巻が刊行されました。主な発行時期は2004年から2005年にかけてです。

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