静岡市立図書館

静岡市立図書館は、静岡県静岡市が設置・運営する公共図書館の総称です。その歴史は、旧静岡市と旧清水市のそれぞれの図書館の歩みに源流を持ち、両市が合併した2003年以降、新たな体制のもとで発展を続けています。

旧静岡市における歩み

旧静岡市での公共図書館設置構想は、1964年に総合企画審議会で具体化され、1966年の総合開発計画で建設が正式に決定しました。追手町の旧県立葵文庫跡地を場所に選定し、総事業費1億2千万円を投じて準備が進められ、1969年12月1日に初代の静岡市立図書館が開館しました（一般利用開始は翌日から）。

しかし、開館から十数年を経て建物の老朽化が顕著になり、1981年には移転新築が検討されるようになります。これを受けて、1984年4月15日に旧館は閉館し、同年7月18日には静岡大学跡地に整備された城北公園の一角に、装いも新たな静岡市立中央図書館が開館しました。この中央図書館の開設以降、旧市内では地域に根差した図書館の整備が進み、複数の図書館が順次開館していきました。

旧清水市における歩み

一方、旧清水市ではこれに先立つ1931年9月、清水市清水本町に清水市立図書館が開館していました。しかし、1945年7月の戦災により、残念ながら建物ごと全て焼失してしまいます。戦後の復興を経て、1952年3月には入江（現在の清水区浜田町）に新築移転し、図書館機能を再開。その後、1967年10月には清水文化センター内に再び移転するなど、時代と共にその拠点を移しながら市民へのサービスを提供し続けました。

合併、そして現在のネットワークへ

2003年4月、静岡市と清水市は合併し、新たな「静岡市」が誕生します。これに伴い、旧静岡市立中央図書館は「静岡市立静岡中央図書館」に、旧清水市立中央図書館は「静岡市立清水中央図書館」にそれぞれ名称が変更されました（後に静岡側は再び「静岡市立中央図書館」に戻ります）。この合併を機に、両市の図書館システムは統合され、蔵書検索や予約がインターネットからも可能になるなど、利便性が大幅に向上しました。また、開館日や時間の延長など、サービス体制の拡充も図られました。

両市間での図書館相互利用制度は合併前の1987年6月から既に始まっていましたが、合併後のシステム統合により、市内全域での連携がより一層強化されました。新たな図書館も開設され、2003年4月には静岡市立北部図書館、2004年6月には静岡市立清水興津図書館、2004年9月には移転した追手町図書館に代わる静岡市立御幸町図書館が開館しています。さらに、2006年3月には蒲原町との合併により、蒲原町立図書館が静岡市立蒲原図書館として加わりました。

サービスの多様化も進み、1971年には初代の静岡市立図書館に児童室が設置され、1979年には移動図書館「たちあおい」号の運行が開始されました。合併後は移動図書館サービスも統合・刷新され、2006年12月からは愛称「ぶっくる」として、葵区・駿河区内の各所を定期的に巡回しています。また、2008年以降には麻機分館や美和分館が開設されるなど、地域密着型のサービス拠点も拡充されています。

現在の静岡市立図書館は、中心的な役割を担う中央図書館をはじめ、御幸町、藁科、西奈、北部、南部、長田、清水中央、清水興津、蒲原といった各地域図書館、そして麻機、美和の分館に加え、移動図書館「ぶっくる」が市内各所を結ぶ、広範かつ連携の取れたネットワークを形成しています。市民一人ひとりが知識や情報にアクセスしやすい環境を提供するため、各施設がそれぞれの特性を活かしながら、様々なサービスを展開しています。近年では、清水中央図書館に作者ゆかりのさくらももこさん関連資料の常設コーナーが設けられるなど、地域ゆかりの文化振興にも貢献しています。

静岡市立図書館は、長い歴史の中で変化を遂げながら、常に市民に開かれた学びと交流の場として、その役割を果たし続けています。

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