静電気放電

静電気放電（ESD）について

静電気放電（Electro-Static Discharge、ESD）とは、物体や人体が帯電した静電気を放出する現象を指します。帯電は、摩擦や誘導、剥離、接触といった様々な要因によって生じます。例えば、ある物体が正の電荷を持つ場合、それとは反対の負の電荷を持つ物体との間に電界が形成されます。この状況はまるでコンデンサに似ており、帯電は一般的には静電気と呼ばれます。

しかし、静電容量を超えると、絶縁体がパンと破壊され、放電が起きます。一例として、雲が正電荷、地面が負電荷に帯電することで生じる落雷があります。日常生活でも静電気はよく経験され、例えば、絶縁体である靴を履いているときに、体が帯電し、負電荷のドアノブに触れると、微小な放電が起こることがあります。自然放電によって帯電が中和されることもありますが、乾燥した環境では帯電が長続きすることがあり、特に冬季に静電気トラブルが多発する原因となります。

静電気放電の分類

静電気放電は、その発生源や条件に応じていくつかのタイプに分類されます。主なものは以下の通りです：

1. コロナ放電
2. ブラシ放電
3. 火花放電
4. コーン放電（バルク表面放電）
5. 沿面放電
6. 雷状放電

ESD対策

電子回路や機器の設計時には、ESDが発生しないように対策を講じることが求められます。これをEMC対策と呼び、電子部品や基板のパターン、筐体やフレームに孤立した導体部分を作らないことが重要です。筐体やフレームを地面に機能接地することで帯電した電荷を地中に逃がし、静電気の影響を軽減することができます。

ESDは電子機器や部品を誤動作させ、時にはダメージを与え得るため、その対策は極めて重要です。さらに放電時に発生する高熱が、機器を焼損させる危険性もあるため、電子回路におけるESD対策は不可欠です。ESDは火災や爆発の原因となることもあるため、安全管理の観点からも十分な対応が必要です。

ESDモデル

帯電は距離や湿度、物体の面積、形状など、様々な要因で変化するため、ESDの放電現象を定量化することは難しいです。ESDモデルは、これを試験するための手法であり、コンデンサや抵抗などで等価回路を作り、特定の電圧を印加して帯電させ、その状態で放電を模擬するものです。

主なESDモデル

• - HBM（Human Body Model）：人体が帯電し、放電する場合を想定したモデルです。人が靴を履いている場合、人体と地面間の静電容量は100pFから200pF程度とされています。
• - CDM（Charged Device Model）：デバイス自体が帯電して放電する場合を想定したモデルです。
• - MM（Machine Model）：機械や装置が帯電し、放電する場合を想定しています。

近年のESD研究

ESD現象は完全に解明されていない部分も多く、電子部品や回路で発生するESDの様々なケースには、既存の物理理論では説明が難しいこともあります。その一例としてCDE（Cable Discharge Events、ケーブル放電イベント）が挙げられます。これは電線がEMIの影響を受けて帯電し、放電する現象です。特に長いケーブルは寄生容量を持っており、LANケーブルやUSBケーブル、さらには電力線でのEMIにも関与しています。これらは、現代の電子機器使用において特に注意が必要なトラブル要因となっています。

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