非協力ゲーム

非協力ゲーム

概要

非協力ゲーム（英語: noncooperative game）とは、ゲーム理論における一分野で、参加するプレイヤーたちが互いに拘束力のある協定や約束を結ばない状況で行われるゲームを指します。このゲームでは、プレイヤーは協力することを前提とせず、それぞれが自己の利益最大化を目指し、独立して戦略を立てます。

協力ゲームとの区別

ゲーム理論では、「協力ゲーム」と「非協力ゲーム」を区別します。この分類は、プレイヤーが実際に協力するかどうかではなく、「制度的」な側面に依拠します。非協力ゲームは、プレイヤー間で交わされた合意や約束に法的な強制力がなく、それを保証・執行するための制度的な枠組みが存在しない状況を指します。協力ゲームは、拘束力のある合意形成が前提となります。

分析対象となる範囲

非協力ゲームという名称ですが、プレイヤー間の協力行動や合意形成の試みが分析対象外となるわけではありません。たとえ拘束力のある制度がなくても、プレイヤー間に暗黙の協力関係が生まれることがあります。例えば、繰り返しゲームでは、将来の利得を考慮した結果として協力的な行動が選択されることがあります。このような暗黙の協力も、制度的な保証に基づかない限り、非協力ゲームの枠組みで分析されます。また、プレイヤーが順番に行動を選択する展開形ゲームにおいて、将来の行動について合意やコミットメントが行われる場合も、法的な強制力を持たない限り非協力ゲームとして扱われます。つまり、プレイヤー間の協力行動自体も、制度的に保証されていないならば、非協力ゲーム理論を用いて分析が可能です。

プレイヤーの行動とゲームの解

非協力ゲームでは、各プレイヤーは他のプレイヤーの可能な行動を考慮しつつも、最終的には自分自身の判断に基づき、独立して戦略を決定します。個々人が最適な戦略を追求します。

非協力ゲームの分析から得られる「解」には二つの意味合いがあります。一つは「規範的意味」であり、合理的なプレイヤーがどのように行動すべきかという理想的な指針を示します。もう一つは「記述的意味」であり、プレイヤーが実際にどのような行動を取る傾向があるか、現実の行動パターンを説明または予測しようとするものです。

ナッシュ均衡

非協力ゲーム理論で最も重要な均衡概念の一つに、ナッシュ均衡があります。ナッシュ均衡とは、ゲームにおけるプレイヤー全員が、他のプレイヤーの戦略を前提として、自分にとって最も良い戦略（最適反応）を選択しており、かつ、どのプレイヤーも戦略を一方的に変更する誘因を持たない状態を指します。この状態は安定しており、多くのゲームにおいて予測される結果として注目されます。ナッシュ均衡は、経済学、政治学、社会学など、幅広い分野で応用されています。

まとめ

非協力ゲームは、拘束力のある制度がない中でプレイヤーが独立して戦略を決定するゲームであり、暗黙の協力や合意形成もその分析対象となります。その解は、合理的な行動指針（規範的意味）と実際の行動予測（記述的意味）を提供し、ナッシュ均衡はその理解に不可欠な概念です。非協力ゲーム理論は、多様な分野における戦略的状況の分析に用いられています。

（参考文献：グレーヴァ香子著『非協力ゲーム理論』知泉書館，2011年）

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