非常線の女

映画『非常線の女』の概要

『非常線の女』（ひじょうせんのおんな）は、1933年4月27日に公開された日本の映画で、松竹キネマが制作および配給を手がけました。監督は小津安二郎であり、モノクロ映画かつサイレント作品として100分の長さを持っています。この作品は、アメリカ映画の影響を受けた和製ギャング映画として位置付けられており、岡譲二が暗黒街の男、そして田中絹代がその情婦を演じています。

あらすじ

物語は、昼間は大手会社でタイピストとして働く時子の生活から始まります。しかし、彼女は私生活で三流ヤクザの襄二と共に過ごしており、社長の息子との危うい関係を築いています。時子は社長の息子を騙しながら金銭を得ようとしている中、学生の宏が仲間になり、襄二は宏の姉・和子に心を奪われてしまいます。この現実を知った時子は和子を脅し、彼女との間に亀裂が生じますが、和子の純真さに惹かれ、自らと襄二がアウトローの世界から足を洗う決意を持つようになります。

襄二もそれに賛同しますが、その矢先に宏が姉が働いている店の商品の窃盗を試みてしまいます。襄二は宏をかばうため、最後の一仕事を選ばなければならなくなります。時子と襄二は会社へ向かい、社長の息子から金を奪い取ります。最終的には、時子が襄二に自首を促すものの、彼がそれを拒否したため、やむなく襄二を撃つ事態に直面します。負傷した襄二は逮捕されることを決意し、二人の運命が交錯することとなります。

スタッフとキャスト

本作の監督である小津安二郎は、同年3月8日から4月にかけて撮影を行いました。脚本は池田忠雄が手がけ、原案はゼームス槇として進行されました。キャストには、時子役の田中絹代や襄二役の岡譲二、和子役の水久保澄子などが名を連ねています。

映像と背景

映画は、現代の日本社会での二面性を描き出しています。昼間は会社員として真面目に働く女性が、夜になるとギャングの情婦という全く異なる姿を見せることで、観客に強い印象を与えます。この二重生活によって、時子は自身の存在意義を再考する機会を持つことになります。

作品解説

田中絹代が演じる時子は、当時の典型的なビジネスガールを体現しながらも、その反面には危険な世界との関わりが存在しています。この映画は、当時の社会状況を背景にした人間ドラマや道徳的葛藤を描き出し、観客に問いかける内容となっています。

また、映画製作にあたっては、地道な努力と多くのスタッフの協力がありました。特に、撮影補助の木下正吉（後の木下恵介）は、深夜撮影の苦労を回顧しています。

興行と影響

『非常線の女』は、初回興行が大阪と浅草で行われ、同時上映として『侠客春雨傘』が選ばれました。また、本作においては、ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督の作品が大きな影響を与えているとされています。これは、海外映画のスタイルを取り入れることによって、日本映画に新たな風を吹き込もうとした小津安二郎の意図が伝わります。

この映画は、サイレント映画の時代の重要な作品として、後世にその影響を与え続けていることでしょう。

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