非択滅

非択滅とは

非択滅（ひちゃくめつ、梵: apratisaṅkhyānirodha）は、仏教における重要な概念の一つであり、「正しい知恵によらない法の止滅」を意味します。この用語は主に、説一切有部においての教えに関連しており、その中では非択滅は無為法の一つに位置付けられています。

説一切有部の考え方

説一切有部では、心と法の性質について特異な見解を持っています。この学派は二心の併起を認めていないため、非択滅は独自の法として位置付けられています。具体的には、ある瞬間に「眼識」が特定の「色」を捉えた場合、他の五感（色、声、香、味、触）によって生じた対象は心の対象とはならず、直ちに過去のものとして消えてしまうのです。

眼識と五識の関係

この状況において、眼識だけでなく、耳識、鼻識、舌識、身識といった五識も同様に、ただ今に意識を集中させる力しか持っていません。これにより、五識は現在の対象にだけ働きかけ、過去や未来の要素を認識することはできません。結果的に、非択滅の概念は、心の働きと法の関係を深く理解する手助けとなります。

非択滅の存在意義

非択滅は、心の状態における動き、それぞれの瞬間に存在する対象との関係を探求するための一つの視点です。この概念は、特に仏教の瞑想や心理学的探求において、現在の認識にのみ焦点を当てる重要性を示しています。

非択滅は、意識の限界と法の本質を考えるための働きかけともなり、どのように心が過去や未来へ意識を向けることなく、現在の瞬間に留まるかを探究します。これは、自己の内面的な動きを理解する上で非常に重要です。

参考文献

非択滅についての詳細な理解を深めるためには、櫻部建と上山春平による『存在の分析＜アビダルマ＞―仏教の思想〈2〉』や、中村元の著作『龍樹』が参考になります。これらの文献は、仏教におけるさまざまな法の考察や、非択滅を含む思考の流れを詳述しています。

非択滅は、心と法、さらには仏教における理解の深化を促すための重要な概念であり、今後の探求の基盤となるでしょう。

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