非棒状渦巻銀河

非棒状渦巻銀河

非棒状渦巻銀河（Unbarred spiral galaxy）は、天文学において銀河をその見た目や構造に基づいて分類する際に用いられる名称の一つです。その最も重要な特徴は、銀河の中心部から伸びる、恒星が密集してできた細長い「棒状構造（バー）」を持たない点にあります。

すべての渦巻銀河は、一般的に中心部にあるバルジ（膨らみ）と、そこから渦を巻いて広がる円盤状のディスク、そしてディスク上に形成されるスパイラルアーム（渦状腕）から構成されています。非棒状渦巻銀河の場合、この中心バルジから直接、あるいはごく短い中央領域を介して、鮮明なスパイラルアームが伸びているように見えます。この「棒状構造の欠如」が、非棒状渦巻銀河を他のタイプの渦巻銀河と区別する明確な基準となります。

形態分類における位置づけ

銀河の形態分類は、宇宙に存在する多様な銀河の形を系統的に整理するために不可欠です。非棒状渦巻銀河は、いくつかの主要な分類システムにおいて重要な位置を占めています。

ハッブル分類 (Hubble tuning fork)

エドウィン・ハッブルによって考案された最も基本的な銀河分類システムであるハッブル分類では、銀河は大きく楕円銀河、レンズ状銀河、渦巻銀河、そして不規則銀河に分けられます。このシステムにおいて、渦巻銀河はさらに、中心に棒状構造を持つかどうかで二つの主要なタイプに分類されます。一つは「棒渦巻銀河（SB）」であり、もう一つがこの非棒状渦巻銀河です。

ド・ヴォークルール分類 (de Vaucouleurs system)

ジェラール・ド・ヴォークルールによって改良された分類システムは、ハッブル分類をさらに詳細にしたものです。このシステムでは、渦巻銀河は中心の構造に基づいて三つのタイプに細分されます。

非棒状渦巻銀河（SA）: 中心に棒状構造を全く持たないタイプ。
中間渦巻銀河（SAB）: 中心に弱い、あるいは不明瞭な棒状構造を持つタイプ。
* 棒渦巻銀河（SB）: 中心に明確で顕著な棒状構造を持つタイプ。

非棒状渦巻銀河は、このド・ヴォークルール分類において「SA」という記号で表記されます。さらに、スパイラルアームの巻き込みの度合いや、中心バルジの大きさによって、SA0（レンズ状銀河に近いもの）、Sa、Sb、Sc、Sd（巻き込みが緩やかになるにつれて）のように細かくサブタイプに分けられることもあります。

具体例

非棒状渦巻銀河の代表的な例としては、ソンブレロ銀河（M104、NGC 4594としても知られる）が挙げられます。この銀河は、その顕著なダストレーンと明るい中心バルジを持つことで有名ですが、中心に棒状構造は確認されていません。

まとめ

非棒状渦巻銀河は、棒状構造を持たないという特徴によって定義される渦巻銀河の一分類であり、ハッブル分類やド・ヴォークルール分類といった主要な形態分類システムにおいて、他の渦巻銀河タイプと明確に区別されます。宇宙には多くの非棒状渦巻銀河が存在し、それぞれの銀河が持つ固有の構造や進化の歴史を理解する上で、これらの形態分類は基礎的な特徴は重要な手がかりとなります。

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