韓国軍のC4Iシステム

韓国軍C4Iシステム：統合と近代化の歩み

韓国軍は、戦略、作戦、戦術の3レベルにわたるC4Iシステムを整備し、近代化を進めています。本稿では、各レベルのシステムの概要、構成要素、運用状況、そして将来展望について詳細に解説します。

戦略レベル：統合と連携の強化

韓国軍の戦略レベルC4Iシステムの中核を担うのは、合同指揮統制システム（KJCCS）です。これは、陸軍、海軍、空軍の統合運用を可能にする最高レベルのシステムであり、従来の戦略部隊指揮所自動化システム（CPAS）の後継として開発されました。KJCCSは、各軍の作戦レベルシステムとのシームレスな連携を重視し、情報の共有と指揮統制の効率化を図っています。さらに、在韓米軍のCENTRIXS-KORシステムとも接続することで、日米韓間の連携強化にも貢献しています。

作戦レベル：各軍の基幹システム

作戦レベルでは、各軍が独自のC4Iシステムを運用しています。

陸軍: 地上戦術統制情報システム（ATCIS）は、軍団から連隊までの部隊運用を統制する基幹システムです。SPIDER/TICN戦術通信網を通信基盤として利用しています。
海軍: 海軍指揮統制システム（KNCCS）は、艦隊や任務群の運用を統制するシステムとして計画されており、各艦の戦術級システム（KNTDS）や、将来的には米海軍のGCCS-M、MIMSと連携する予定です。海上作戦衛星通信システム（MOSCOS）が通信基盤となります。
* 空軍: 空軍指揮統制システム（AFCCS）は、航空団レベルまでの部隊運用を統制します。LG CNS社が開発を担当しています。

これらのシステムは、ムグンファ3号・5号によるANASIS衛星通信システムを活用し、安定した通信を確保しています。

戦術レベル：統合通信基盤の構築

戦術レベルでは、韓国型戦術データ・リンク（TDL-K）が統合通信基盤として整備されています。陸海空軍はそれぞれ異なる規格を採用しますが、指揮所において統合することで、相互運用性を確保しています。

陸軍

韓国陸軍は、歩兵、戦車などの機動兵科における大隊級以下の戦闘指揮システム（B2CS）、野戦砲兵の火力統制システム（BTCS）、高射砲兵の火力統制システム（防空指揮統制警報システム）などを運用しています。これらのシステムは、KVMF-TDLとSPIDER戦術通信システムを通信基盤としています。

海軍

韓国海軍は、韓国型NTDS（KNTDS）を運用しています。これは、各艦の戦術情報処理装置と、リンク11などの戦術データ・リンクで構成され、海軍と空軍の共用情報基盤としての機能も有しています。様々な種類の戦術情報処理装置が、艦種に応じて搭載されています。

空軍

韓国空軍は、KADGE（Korea Air Defense Ground Environment）システムを構築しています。これは、米ヒューズ社のADGEシステム・シリーズを基にしており、中央防空統制所（MCRC）を中核に、各レーダーサイトとネットワークを構築しています。リンク16も導入されていますが、すべての機体への搭載は進んでいません。

情報系システム：情報の統合と効率化

作戦統制系システムを補完する情報系システムとして、軍事情報統合処理システム（MIMS）が導入されています。これは、様々な情報資産を統合管理・配布し、情報活動を効率化するとともに、指揮官の意思決定を支援するシステムです。

まとめ：持続的な近代化

韓国軍のC4Iシステムは、戦略レベルにおける統合化、作戦レベルにおける各軍の基幹システムの整備、そして戦術レベルにおける統合通信基盤の構築という3つの柱によって支えられています。今後も、技術革新を踏まえた持続的な近代化が期待されます。ただし、システム間の完全な相互運用性確保や、最新技術の導入など、課題も残されています。

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