音 (アルバム)

ZABADAK 9thアルバム『音』：新たな地平を切り開いたソロ作品

1994年10月25日、Biosphere Recordsより発売されたZABADAKの9枚目のアルバム『音』。前作『桜』から約1年9ヶ月ぶり、そして上野洋子脱退後の吉良知彦による初のソロアルバムという位置づけで、バンドの歴史において大きな転換点となる作品です。

本作『音』では、全楽曲の作曲と編曲を吉良知彦が単独で担当。さらに、リードボーカルもほとんどの曲を彼が歌い上げています。これは、それまでのZABADAKとは異なる、吉良知彦の音楽性を前面に出した作品であることを示しています。

しかし、ソロアルバムであるにもかかわらず、吉良知彦は単独で作品を作り上げるのではなく、彼と親交の深い多くのアーティストをゲストボーカルとして迎えています。この点も、本作の特徴と言えるでしょう。それぞれのアーティストの個性と吉良知彦の音楽性が融合することで、多様な音楽的色彩が表現されています。

楽曲ラインナップを見てみると、その多様性がより明確になります。例えば、「circus dream」や「星の約束」、「点灯夫」、「planet earth,I sing」、「月のない空」、「静かに窓を開けよう」といった楽曲では、吉良知彦がリードボーカルを務め、作詞は高橋鮎生や小峰公子などが担当しています。これらの楽曲は、吉良知彦の繊細かつ力強いボーカルと、詩的な歌詞が見事に調和した、聴き応えのある作品に仕上がっています。

一方、「fatal flaw featuring Cara Jones」では、Cara Jonesが作詞とボーカルを担当し、吉良知彦の作曲・編曲によって新たな魅力を引き出しています。また、「14の音」という楽曲では、宮原芽映、小峰公子、Cara Jones、保刈久明、佐藤マサハル、杉林恭雄、藤井珠緒、新居昭乃、濵田理恵、伊藤ヨタロウ、原マスミ、太田恵資、久保田洋司、種ともこという、実に14名ものアーティストが作詞とボーカルに参加。この楽曲は、まさに本作の多様性を象徴する、壮大な作品となっています。

「海を見に行く」では、小峰公子と吉良知彦がデュエットで歌っており、二人の美しいハーモニーが印象的です。そして、アルバムタイトルと同名の楽曲「音」は、吉良知彦が作詞とボーカルを担当。この曲は、アルバム全体のテーマを象徴するような、重要な楽曲と言えるでしょう。

『音』は、上野洋子脱退後のZABADAKの新たな出発点であり、同時に吉良知彦のソロアーティストとしての確固たる地位を確立した記念碑的な作品です。彼の音楽的才能が存分に発揮されたこのアルバムは、ZABADAKファンのみならず、多くの音楽愛好家にとって、長く記憶に残る作品となるでしょう。ゲストボーカリストたちの個性豊かな歌声と、吉良知彦の洗練された音楽性が融合した『音』は、まさに聴く者の心を揺さぶる傑作です。

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