須磨利之

須磨 利之：日本初のSM雑誌編集者の足跡

須磨利之（すま としゆき）は、日本初のSM（サディズム・マゾヒズム）専門雑誌「奇譚クラブ」の編集者として、印刷業界出身の背景を持ちながら、日本のエロティックメディアに新たな風を吹き込みました。彼は1920年に京都で生まれ、1992年に亡くなるまで、日本のサブカルチャーに多大な影響を与えました。須磨はまた、美濃村晃、喜多玲子など、いくつかのペンネームを使って活動していました。

幼少期と影響

須磨は、関西を代表する印刷会社「内外出版印刷」の一族で育ちました。父が早逝したため、母と伯父の庇護の下で青春を過ごしました。幼少期には、伯父の蔵で見つけた「責め絵」と呼ばれる浮世絵や、縛られている母親を目撃したことが、後の彼の芸術的関心に強い影響を与えました。これらの経験を通じて、須磨は日本画を学び、心に残る母親の姿を絵に残すことを目指しました。特に、伊藤晴雨の作品に魅了され、緊縛の技術を学ぶために飛田遊郭へ通い、女性たちに協力を求めるようになります。

SM文化の広がり

1950年には、銀巴里楼という妓楼で「縛られ女郎ショー」を開催し、そこでの人気が彼のキャリアの転機となります。当初は一般的なエロティックな内容の雑誌に従事していましたが、特に「奇譚クラブ」においてSMに特化することによって、出版物の売れ行きが飛躍的に向上しました。第5号からの反響は顕著で、作家団鬼六が寄稿した『花と蛇』など、他の作家からも支持を受けました。須磨はこの頃、SMを一般化させる地道な努力を続け、その姿勢は多くのファンを魅了しました。

雑誌の発展と変遷

しかし、彼の活動は順風満帆ではありませんでした。発禁処分を受けたこともあり、上司からの圧力で一般的なエロ雑誌へと路線変更を迫られます。これを受けて1954年に須磨は辞職し、東京へ移ります。1956年には久保書店から『裏窓』を発行し、徐々にSM要素を取り入れたサスペンス雑誌へとシフトさせることに成功しました。

また、発行第3号では、濡木痴夢男と「虻プロ」を立ち上げて新雑誌『あぶめんと』を発刊し、さらなる挑戦に踏み出します。1968年には「SMマガジン」をコバルト社から発行し、これは須磨の長年の努力の結晶と言えるでしょう。

最後に

須磨利之は、個人的な体験やアートへの情熱を通じて、日本におけるSM文化の認知度を高め、多くの人々に影響を与える存在となりました。彼の功績は、当時の文化的背景とも相まって、今なお多くの人々に影響を与え続けています。彼の作品と活動は、私たちに新たな視点を提供し、解放的な表現の可能性を示しています。

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