頌栄幼稚園頌栄保姆伝習所

頌栄幼稚園頌栄保姆伝習所：日本の保育教育史における礎

1889年、アニー・ライオン・ハウによって設立された頌栄幼稚園頌栄保姆伝習所は、日本の保育教育史において重要な役割を果たした機関です。日本最古のキリスト教系保育者養成機関の一つとして、その歴史と教育理念は、今日の保育のあり方に多大な影響を与えています。

ハウは、質の高い幼稚園教育のためには、それを担う保育者の育成が不可欠だと考え、幼稚園の開設に先駆けてこの伝習所を設立しました。当初の課程は2年間で、週38時間の授業が行われていました。宗教教育を基礎としつつ、フレーベルの教育哲学や教育思想を中核に据えたカリキュラムは、当時としては画期的なものでした。

具体的な授業内容としては、修身、教育学、心理学、理科、保育法、唱歌、音楽、作文などが含まれていました。これらの科目は、単なる知識の習得にとどまらず、実践的な保育スキルと倫理観の涵養を目指していました。頌栄保姆伝習所は、その後全国各地に設立された多くの保母伝習所のモデルとなり、日本の保育教育の普及と発展に大きく貢献しました。

1893年には、既存の普通科に加えて2年課程の高等科が設置され、日本で最初の4年制幼稚園教諭養成機関となりました。これは、保育者の専門性を高め、より質の高い保育を提供するための大きな一歩でした。より高度な専門知識と実践的スキルを習得できる環境を提供することで、卒業生たちは日本の保育現場を支える重要な担い手として活躍しました。

頌栄保姆伝習所と同時に設立された頌栄幼稚園は、現在も存続しており、長い歴史の中で培ってきた教育理念を受け継いでいます。両機関は、互いに連携しながら、日本の保育教育の発展に貢献し続けてきました。伝習所は、時代に合わせて教育内容を改善し、常に高い水準の保育者育成を目指してきました。

頌栄幼稚園頌栄保姆伝習所の歴史は、日本の保育教育の歴史そのものです。その設立から現在まで、数多くの保育士を輩出し、日本の保育の進歩に貢献してきた功績は計り知れません。この機関の設立と発展は、アニー・ライオン・ハウの献身的な努力と、時代の要請に応える柔軟性、そして高い教育理念の賜物と言えるでしょう。今後も、その精神は日本の保育界に受け継がれていくことでしょう。

参考文献

日本保育学会『日本幼児保育史第2巻』フレーベル館 1979年
文部省『幼稚園教育百年史』ひかりのくに 1979年
* 第24回全国私立保育園研究大会実行委員会編『保育の先駆者たち』兵庫県保育所連盟・神戸市私立保育園連盟 1981年

もう一度検索