頭絡

頭絡（とうらく）とは

頭絡とは、馬や牛などの家畜の頭部に装着する器具のことで、馬具または畜産用具として用いられます。

馬具としての頭絡

乗馬用の頭絡は、騎手が手綱を通じて馬に指示を伝えるための重要な役割を果たします。これは「勒（ろく）」とも呼ばれます。

構成

頭絡は、いくつかの革ひもと金具を組み合わせて作られています。主な構成要素は以下の通りです。

項革（うなじがわ）: 耳の後ろ、後頭部に回す革
額革（ひたいがわ）: 耳の前、目の後ろに来る革
頬革（ほおがわ）: 耳の下から口に向かい、項革と銜を連結する革
鼻革（はながわ）: 鼻の上に当たる革
喉革（のどがわ）: 耳の下から喉元を通る革
銜（はみ）: 口にくわえさせる金具
手綱（たづな）: 騎手が持ち、馬を操作するための革紐

水勒（すいろく）

水勒は、銜枝のない水勒銜を1つだけ使用する、最も基本的な頭絡です。銜環が円形で銜身と固定されていないものが一般的ですが、Dビットやチークビットなど、馬の口からずれにくい工夫がされた銜も用いられます。

水勒は口への作用が穏やかなため、初心者や練習用、軽度の馬場馬術、障害飛越、外乗、猟騎、馬車など、幅広い用途で使用されます。

鼻革の種類

水勒で使用できる鼻革には、いくつかの種類があります。

カブソン鼻革: 最も基本的な鼻革で、頬骨の下から下顎を通り、馬の顔を一周します。口を閉じさせる作用は弱いです。
フラッシュ鼻革: カブソン鼻革に、鼻梁からおとがいくぼへ回す革を追加したものです。銜を安定させ、口を開けて逃げようとする馬に効果があります。
ドロップ鼻革: 鼻梁の低い位置からおとがいくぼを通る鼻革で、口を開けるのを防ぎます。
クロス鼻革: 鼻梁部分でX字に交差する2本の鼻革です。
ウエスタン: 鼻革を省略した頭絡を用いることもあります。

大勒（たいろく）

大勒は、銜枝のある大勒銜と、小型の水勒銜である小勒銜を組み合わせて使用する頭絡です。騎手は2組の手綱を持ちます。

大勒銜の手綱を引くと、グルメットがおとがいくぼを圧迫し、テコの原理で馬の口に強く作用します。中級・上級の馬場馬術や、前進気勢が強い馬の障害飛越で使用されます。

ペラム

ペラムは、大勒銜のみを使用し、小勒銜を用いない頭絡です。大勒手綱と小勒手綱に相当する手綱を銜枝の先と銜身の横に取り付け、グルメットを合わせて使用します。1本の手綱のみをつけることもあります。

馬場馬術では見られませんが、障害飛越やウエスタン馬術で使用されます。

ハッカモア

ハッカモアは、銜を使用しない頭絡の総称で、ウエスタン馬術でよく用いられます。手綱は鼻革に取り付けられ、馬の頭部に作用します。銜身のないハッカモア銜と組み合わせて使用することもあります。

畜産用具としての頭絡

畜産用としては、主に乳牛や羊などの家畜の飼育に、銜のない無口が用いられます。

近年では、フリーストール牛舎の普及や乳牛の穏やかな性格から、鼻輪の代わりに無口を使用することが増えています。乳牛用の頭絡も市販されており、共進会などで使用されています。

酪農家の中には、牛の出生年に合わせて無口の色分けをする人もいます。

一方、肉用牛は従来通り鼻輪で管理されることが多いです。これは、肉用牛の気性が荒いためです。

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