飛田穂洲

飛田穂洲（とびた すいしゅう）

飛田穂洲は1886年12月1日に茨城県で生まれ、日本における野球の発展に大きく寄与した内野手、学生野球指導者、野球評論家、編集者である。彼の本名は飛田忠順であり、彼の業績から「学生野球の父」と称される存在として知られている。穂洲は1965年1月26日、78歳で亡くなるまで、野球界に多くの足跡を残した。

経歴

茨城県東茨城郡大場村（現在の水戸市）で豪農の子として育った飛田は、水戸中学校を卒業後、1907年に早稲田大学に進学する。父の反対を押し切って野球部に入部し、二塁手としてプレーしつつ、5代目主将にも選ばれる。1910年、シカゴ大学との試合で全敗を喫し、責任を感じて引退してコーチ役に転向した。その後、明治大学に転校したり戻ったりしつつ、報知新聞で記者としても活躍した。

1913年には押川春浪の設立した武侠世界社に入社し、雑誌『武侠世界』の編集に関与。この間に、早大野球部の初代監督にも就任し、早稲田の野球部が栄光を取り戻すための道を切り開いた。特に映像化された練習方法や戦術に最善を尽くす「練習常善」の姿勢が彼の指導の柱となった。

監督時代には厳しい練習を課しながらも選手たちの成長を促し、「早大野球部の黄金期」を築くことに成功した。1918年には立教大学野球部への指導にも関与し、後に東京六大学野球連盟への加入を進めた。翌1925年には早稲田が19年ぶりに早慶戦に勝利したことで監督職を勇退し、新たな歴史を刻むことになる。

文筆活動と学生野球の普及

飛田穂洲は野球指導だけでなく、評論活動も行い、1926年からは朝日新聞社に勤務しながら中高生野球や大学野球の評論を発表。彼はまた、東京六大学野球連盟の理事や公式記録員としてもその活動を通じて学生野球の普及に尽力した。著作も多く、特に『早稲田大学野球部史』や『野球道』などがある。また、彼の考え方は「一球入魂」として、野球を一種の武道と捉え、試合よりも練習を重視する姿勢を促した。

野球統制と戦時下の活動

穂洲は1932年、野球統制臨時委員に就任したが、次第に文部省の統制政策には批判的になり、日中戦争から太平洋戦争にかけては野球の価値と意義を訴え続けた。戦局の悪化により野球は圧迫され、彼はその存続に奔走したが、それでも教育の一環としての学生野球を重視し続けた。1950年代にはGHQによる夏の甲子園の復活に関与し、戦後復興に寄与した。

業績と評価

戦後も学生野球の発展に寄与し、1946年に日本学生野球協会が設立されると、その中心として活躍した。また、彼の取り組みは各地で顕彰され、各賞も受賞。野球殿堂入りも果たし、彼の名声は不動のものとなった。

穂洲の言葉や思想は、戦後の野球界にも大きな影響を与えつつ、学生たちにとっての教育の一環としての野球の重要性を訴え続けた。彼の教えは今もなお、現代の野球界に息づいている。彼の死後、記念碑や著作が建立され、彼の功績を讃え続けられている。元・早稲田大学野球部監督の石井連藏もその後継者として彼の教えを引き継いでいった。

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