飛龍の拳

『飛龍の拳』（ひりゅうのけん）は、カルチャーブレーンが開発・発売を手掛ける、日本の格闘アクションゲームシリーズ。1985年にアーケードゲームとして産声を上げ、以降、様々な家庭用ゲーム機へとプラットフォームを広げながら多くの続編が制作された。単純な格闘ゲームの枠を超え、アクションと物語性を融合させた独自のゲーム性で知られる。

ゲームシステム

シリーズの中核をなす大きな特徴は、「心眼システム」と呼ばれる独自の戦闘機構にある。これは、対戦相手やプレイヤー自身の体の一部に表示される円形の印（心眼）を、攻撃や防御のターゲットとして利用するものである。印は上段、中段、下段のいずれかに現れ、プレイヤーは十字キーと攻撃ボタンを組み合わせることで、相手の心眼を狙って攻撃を仕掛けたり、自身の心眼への攻撃を防いだりする。心眼にはいくつかの種類があり、通常の赤い印の他に、ダメージが倍になる青い印、連続攻撃へと移行できるR（ラッシュ）の印、そして一撃で相手を倒せる秘孔を示す☆の印が存在する。これらの印を的確に判断し、瞬時の攻防を繰り広げることが、本シリーズにおける戦闘の醍醐味となっている。ただし、この心眼システムは『飛龍の拳S ゴールデンファイター』までの採用となり、『SD飛龍の拳』以降は、当て身投げやカウンター、ステップ移動などを主体とした、よりリアルタイムアクション性の強いシステムへと変化している。

戦闘中、攻撃をヒットさせたり、敵の攻撃を防いだりすることで「KOゲージ」が蓄積される（『飛龍の拳III』以降はガード成功時にゲージ増加）。このゲージが最大値（100）に達すると、強力な必殺技である「闘気」や「飛龍の拳」を発動可能となる。さらに、『飛龍の拳II ドラゴンの翼』以降は、主人公の龍飛をはじめとする主要キャラクターたちが、特定の条件を満たすことで「変身」し、より強力な「法力」と呼ばれる必殺技を使用できるようになるなど、システムは続編を重ねるごとに進化していった。

初期のアーケード版は純粋な対戦格闘ゲームであったが、ファミリーコンピュータへの移植版である『飛龍の拳奥義の書』で横スクロールアクション要素が加わり、以降の多くの作品ではアクションパートと格闘パートを組み合わせた構成がシリーズの基本スタイルとして確立された。ゲーム内の文字表記は、漢字フォントが搭載されていないため、基本的にひらがな・カタカナで表示される。

シリーズ作品

『飛龍の拳』シリーズは、多様なプラットフォームで展開された。

アーケード版
北派少林飛龍の拳 (1985年)
ファミリーコンピュータ版
飛龍の拳奥義の書 (1987年)
飛龍の拳II ドラゴンの翼 (1988年)
飛龍の拳III 五人の龍戦士 (1990年)
飛龍の拳スペシャルファイティングウォーズ (1991年)
スーパーファミコン版
飛龍の拳S ゴールデンファイター (1992年)
飛龍の拳S ハイパーバージョン (1992年)
SD飛龍の拳 (1994年)
ゲームボーイ版
飛龍の拳外伝 (1990年)
SD飛龍の拳外伝 (1995年)
SD飛龍の拳外伝2 (1996年)
SD飛龍の拳EX (1999年)
飛龍の拳烈伝GB (2000年)
プレイステーション版
バーチャル飛龍の拳 (1997年)
NINTENDO64版
飛龍の拳ツイン (1997年)
SD飛龍の拳伝説 (1999年)

この他にも、複数の作品が開発中止となったことが知られている。

物語

物語は、中国の秘境・龍飛峰で育った若き拳法家、龍飛を主人公に展開する。彼の師である寿安老師が謎の組織「龍の牙」によって暗殺され、秘奥義「飛龍の拳」の奥義書を奪われたことから物語は始まる。老師の遺言に従い、少林寺の元涯の下で修行を積んだ龍飛は、奥義書を取り戻すため、そして龍の牙の野望を阻止するために異種格闘技世界大会へと挑む。その過程で、龍の牙が世界征服を企む暗黒界の尖兵であることを知る。

続編となる『飛龍の拳II』以降は、太古の天界と魔界の戦いや、封印された魔界の大王「大魔神」の復活という壮大な背景が加わる。龍飛は、天界の英雄・龍天大聖によって遣わされた他の4人の戦士たちと共に「五人の龍戦士」として覚醒。大魔神の復活を画策する龍の牙や月光衆といった暗黒界の勢力との激しい戦いに身を投じていく。シリーズを通して、龍飛たちの成長と、光と闇の勢力が繰り広げる果てしない戦いが描かれる。

登場人物

物語の中心となるのは、黄金龍の化身である主人公・龍飛。彼の師である寿安老師や、少林寺の貫主・元涯といった導き手が存在する。龍飛と共に戦う「五人の龍戦士」は、麒麟の化身ミンミン、鳳凰の化身ハヤト、獅子の化身ワイラー、白金龍の化身昇龍で構成される。彼らはそれぞれ異なる背景を持つが、共通の宿命の下に集結する。

敵対勢力である龍の牙（魔界衆）は、総帥である龍魔王フーズ・フーを中心に、牙龍獣士六人衆、魔界衆四天王、月光衆四殺王、五大明王など、多数の強力な敵キャラクターを擁する。これらの敵は、主人公たちの行く手を阻み、大魔神の復活を目指す。

必殺技

KOゲージを消費して放つ必殺技は、シリーズの重要な要素である。「闘気」は気功エネルギーを放つ飛び道具、「飛龍の拳」は宙を舞って放つ強力な蹴り技で、これはシリーズタイトルにもなっている龍飛の門外不出の奥義である。また、『II』以降で登場する「法力」は、変身した龍戦士や一部の敵がマントラと共に放つ超常的な技で、炎、雷、光、暗黒など様々な属性を持つ。シリーズによっては、ボクサーの「キラーズハリケーン」やプロレスラーの「ジャンピングニー」、特定の敵が使う「修羅地獄拳」や「月光拳」といった個性的な必殺技も登場する。

サウンドトラックと評価

本シリーズのBGMは、近年になって初めてサウンドトラックとして商品化され、往年のファンからの注目を集めている。また、ファミコン版『飛龍の拳奥義の書』は当時のゲーム雑誌『ファミコン通信』のクロスレビューで高い評価を獲得しており、その独特なゲーム構成や、映画のようなストーリー仕立て、緊張感のある格闘シーンなどが賞賛された。

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