食人族

映画『食人族』について

『食人族』（原題：Cannibal Holocaust）は、ルッジェロ・デオダート監督による1980年のイタリア映画で、食人や強姦などの過激な描写を特徴とするホラー作品です。日本では1983年に公開され、その衝撃的な内容から大きな話題を呼びました。

概要

この映画は、アマゾンの奥地で消息を絶った撮影隊の記録フィルムという設定で、全編がドキュメンタリー風に構成されています。しかし、これはフィクションであり、モキュメンタリー（フェイクドキュメンタリー）という手法を用いています。公開当時、配給会社は本作を「本物のスナッフフィルム」のように宣伝したため、観客の間で現実の出来事と誤解する人が続出しました。この手法は、後の『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』などにも影響を与えました。

ストーリー

物語は、アマゾン奥地の通称「グリーン・インフェルノ」と呼ばれる密林地帯へドキュメンタリー撮影のために向かった4人の探検隊が消息を絶つところから始まります。ニューヨーク大学のハロルド・モンロー教授は、彼らの捜索のために現地へ向かいます。そこで、原住民であるヤマモモ族と接触し、彼らの手によって探検隊が残したフィルムを発見します。

フィルムには、探検隊がヤマモモ族と出会ってからの行動が記録されています。彼らは部族の少女をレイプしたり、部族間の争いを演出するために原住民を焼き殺すなどの残虐行為を繰り返していました。最終的に、彼らはヤマモモ族の怒りを買い、捕らえられて殺害され、食人される様子が記録されています。

試写後、モンロー教授はフィルムの内容に激怒し、その焼却を求めます。そして、「真の野蛮人はどちらなのだろうか」と自問します。

登場人物

ハロルド・モンロー教授（演：ロバート・カーマン）：行方不明の4人を捜索するために現地へ赴き、ヤマモモ族と接触する。
フェイ・ダニエルズ（演：フランチェスカ・チアルディ）：探検隊のメンバー。ヤマモモ族にレイプされ、殺害される。
アラン・イエーツ（演：ガブリエル・ヨーク）：探検隊のメンバー。残虐行為を繰り返し、ヤマモモ族に殺害される。
ジャック・アンダース（演：ペリー・ピルカネン）：探検隊のメンバー。アランと同じく残虐行為を繰り返し、ヤマモモ族に殺害される。
マーク・トマソ（演：ルカ・ジョルジオ・バルバレスキー）：探検隊のカメラマン。最後まで生き残るも、最終的に殺害される。
フェリペ（演：ギレルモ）：現地ガイド。毒蛇に噛まれて死亡。

スタッフ

監督：ルッジェロ・デオダート
製作：ジョヴァンニ・マッシーニ、F・D・チネマトグラフィカ
原案：ジャンフランコ・クレリチ
脚本：ジャンフランコ・クレリチ
音楽：リズ・オルトラーニ
撮影：セルジオ・ドフィッツィ
美術：マッシモ・アントネッロ・ジェレング
編集：ビセンツィオ・トマージ

製作の背景

本作は、ヤラセを多用したモンド映画へのパロディとして製作されました。音楽には『世界残酷物語』など、モンド映画に携わってきたリズ・オルトラーニが起用されています。また、ポスターのイメージとなった串刺し女性は、映画のスタッフが実際に杭に腰掛けて撮影したものです。劇中には、実際の銃殺刑映像も含まれています。また、動物虐待のシーンでは、実際に動物が殺されており、監督は「殺した動物は食べた」と述べています。

公開と反響

日本では、「あなた、食べる？食べられる？」というキャッチコピーや衝撃的なCMにより、大ヒットを記録しました。しかし、その過激な描写から多くの批判も浴びました。DVD版は一部修正されていますが、ヘア解禁版は廃盤となり、入手が困難になりました。

作品の評価

怪談史研究家の小池壮彦は、本作の音楽や構成を高く評価しています。特に、残酷なシーンに美しいメロディを組み合わせる手法は、モンド映画の伝統を受け継いでいると述べています。また、劇中のニュース映像は実際のものであり、本作全体が現実と虚構を混乱させる意図を持って作られていると指摘しています。

備考

「テレビではこれ以上お見せできません」という惹句は、その後のホラー映画のCMでも多用されるようになった。
デオダート監督は、本作以前にも『カニバル』という食人族映画を製作している。
イーライ・ロス監督の『グリーン・インフェルノ』は、本作のリブート作品である。

関連作品

『カニバル』（1977年）
『人喰族』（1981年）
『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』（1999年）
『グリーン・インフェルノ』（2015年）

外部リンク

公式ウェブサイト（英語）
食人族 - allcinema
食人族 - KINENOTE
Cannibal Holocaust - オールムービー（英語）
Cannibal Holocaust - IMDb（英語）

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