飯塚書店

飯塚書店（いいづかしょてん）は、東京都文京区小石川に本社を置く日本の出版社である。1948年に創業し、1996年1月12日に株式会社として設立された。代表者は飯塚行男氏が務める。

同社の出版活動は、特に俳句、短歌、川柳といった日本の短詩型文学の分野に重点を置いていることで知られる。現代を代表する歌人や俳人、川柳作家の作品集（句集、歌集、句集など）や、これらの文学形式に関する研究書、入門書、評論集などを数多く刊行しており、日本の詩歌文化の発展と普及に大きく貢献している。短詩型文学は、短い形式の中に深い情感や思想を凝縮させる独特の表現手法であり、飯塚書店はこうした形式の多様性と奥深さを読者に伝える役割を果たしている。

飯塚書店の出版リストは、国内の詩歌作品に留まらない広がりを見せている点も特筆される。特に1960年代には、20世紀の激動期を生きた世界各国の革新的な詩人たちの作品を翻訳したアンソロジーを積極的に刊行し、当時の日本の読者に世界の現代詩の潮流を紹介した。これは、まだ外国文学の情報が限られていた時代において、非常に意義深い取り組みであったと言える。例えば、フランスのシュルレアリストであるルイ・アラゴンや、ロシア革命期の詩人ウラダーミル・マヤコフスキーといった、世界文学史に名を刻む著名な作家たちの主要作品を網羅した著作集も多数手がけている。『アラゴン選集』や『マヤコフスキー選集』といったこれらの選集は、それぞれの作家の全貌を知る上で貴重な資料であり、文学研究者や学生、そして熱心な読者にとって不可欠な存在となっている。

創業から70年以上の長い歴史を持つ飯塚書店は、一貫して文学、特に詩歌や翻訳文学の分野で独自の地位を築いてきた。激しい時代の変化や出版業界の状況にも対応しながら、質の高い書籍を世に送り出すという創業以来の理念を守り続けている。短詩型文学の専門出版社として、国内の優れた才能を発掘・紹介する一方で、翻訳出版を通じて世界の文学遺産を日本の読者に届けるという二重の役割を担ってきたその軌跡は、日本の近現代文学史、特に詩歌の受容史や翻訳文化の発展を考える上でも重要な一頁を占める。

会社の正式名称は株式会社飯塚書店。所在地は〒112-0002 東京都文京区小石川5-16-4である。代表取締役社長は飯塚行男氏。個人創業は1948年だが、法人としての設立は1996年であるため、その間に組織形態の変更があったことが伺える。

現在の飯塚書店は、公式サイトを通じて出版情報の告知や書籍の紹介を行うほか、X（旧Twitter）などのソーシャルメディアも積極的に活用し、読者や文学関係者との間で活発な情報交換を行っている。これにより、伝統的な出版活動と現代のコミュニケーション手法を融合させ、より多くの人々に文学の魅力を伝える努力を続けている。俳句、短歌、川柳といった日本の伝統的な詩歌に関心を持つ人々はもちろん、世界の多様な詩や文学に触れたいと考える読者にとっても、飯塚書店の出版物は引き続き重要な情報源であり続けている。

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