飯田市美術博物館

飯田市美術博物館：伊那谷の自然と文化を体感する複合施設

長野県飯田市に位置する飯田市美術博物館は、美術館と博物館の機能を兼ね備えた市立施設です。飯田城二の丸跡という歴史的な土地に建ち、地域住民の熱意と長年の歴史が凝縮された文化拠点となっています。

歴史：市民の願いから生まれた博物館

かつてこの地には飯田城の二の丸が存在していました。明治時代には長野県中学校飯田支校、その後は長野県飯田長姫高校が置かれましたが、両校とも移転。この跡地に、飯田市出身の画家・菱田春草の作品を展示する記念館の建設を望む市民の声や、飯田下伊那地域の自然・歴史・文化を紹介する博物館設立の要望が高まっていました。これらの願いを受け、飯田市は美術館と博物館の機能を融合させた施設の建設を決定。昭和58年には準備事務局が設置され、基本構想委員会、建設研究委員会、展示研究委員会による綿密な検討を重ね、昭和61年には飯田城址の発掘調査を実施しました。

原広司設計+アトリエファイ建築研究所による設計で、昭和62年6月に着工、昭和63年10月にプレオープン。企画展示やプラネタリウムなどが先行公開され、平成元年10月8日に正式開館しました。開館は、市制施行50周年記念事業の一環として行われました。平成29年には、菱田春草の遺族から多数の作品が寄贈・寄託され、それまで困難だった常設展示が実現しました。2023年10月16日から2024年3月8日までは、施設の改修工事のため長期休館していました。

施設の特色：伊那谷の自然と文化を凝縮

飯田市美術博物館は、伊那谷の自然と文化を基本テーマに、美術、自然科学、人文科学に関する資料を収集・保管し、市民に公開しています。調査研究活動にも力を入れており、地域社会への貢献を目的としています。

建築設計は原広司設計+アトリエファイ建築研究所が担当し、南アルプスをイメージした鋸刃のような特徴的な屋根が印象的です。市民が作品を発表・展示できるスペースも設けられており、地域文化の活性化にも貢献しています。また、日本で唯一、スピノサウルスの全身復元骨格を常設展示していることでも知られています。

2階にはプラネタリウム「天歩」があり、2011年にはデジタル化されました。地元出身の菱田春草の作品を数多く所蔵しており、彼の芸術世界に触れることができます。

付属施設と分館

博物館には、日夏耿之介記念館、柳田國男館などの付属施設があり、それぞれの分野における深い理解を促進しています。さらに、飯田市上郷考古博物館・秀水美人画美術館を分館として持ち、地域文化の多様性を広く紹介しています。

安富桜：飯田市のシンボル

博物館敷地内にある「安富桜」は、飯田市を代表する名木であり、長野県指定文化財（天然記念物）にも指定されています。推定樹齢は400年以上で、飯田藩初代藩主の時代に植えられたと伝えられています。かつてこの地にあった長野県飯田長姫高校の校庭にあり、生徒たちに愛されてきました。

伊那谷の岩石園：地域の地質を学ぶ

2016年に開設された伊那谷の岩石園には、25点の岩石標本が展示されています。伊那谷の豊かな地質を学ぶ貴重な場所となっています。

利用案内

開館時間は午前9時30分から午後5時まで。休館日は月曜日（祝日の場合は火曜日に振替）、祝日の翌日、年末年始です。展示入替や燻蒸作業などにより、臨時休館となる場合もあります。

飯田市美術博物館は、地域住民の熱意と歴史が織りなす、貴重な文化施設です。伊那谷の自然と文化に触れ、歴史と芸術を深く学ぶことができる場所として、多くの人々に親しまれています。

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