馬鋸

馬鋸（うまのこ）とは

馬鋸は、詰将棋における特殊技法の一つで、特に長手数の手順を導くために用いられます。この手法では、竜馬（馬）を鋸の刃のようにジグザグに動かしながら手を進めていきます。

概要

馬鋸の歴史は1697年に発表された無住僊良の著作『象戯大矢数』に遡ります。この作品集には、馬鋸を使った85手詰の詰将棋が収められています。具体的には、初手からの動きとして、▲7二馬△9一玉▲7三馬と馬をジグザグに動かしつつ、玉を8一と9一の間で行き来させる手順が記載されています。この方法では、21手目に▲2七馬と桂を取るまでは馬を玉から遠ざけ、以降は逆に戻って接近させます。最後には長い収束へと進んでいくのです。この技法の魅力は、盤面の変化が非常に少ないにもかかわらず、複雑で長大な手順を生み出せる点にあります。

現代の詰将棋においても馬鋸は多くの作品に取り入れられており、特に長手数記録を持つ作品に多く見られます。2022年までの記録では、橋本孝治の「ミクロコスモス」が1525手、添川公司の「新桃花源」が1205手の詰将棋として有名です。これらは馬鋸の技法を基に制作されています。また、馬鋸は「煙詰」と呼ばれる形態の詰将棋でも利用されており、特に「妖精」シリーズなどの作品に採用されています。

バリエーション

馬鋸にはさまざまなバリエーションが存在します。

• - 往復馬鋸: 最も一般的な形式で、馬が往復する手法。
• - 片道馬鋸: 馬が出題時から玉に近寄るだけの短距離手法。
• - 3段馬鋸: 通常の動きよりもさらに3マス動かす方式。
• - 1手馬鋸: 通常2手で1サイクルが1手で進む新発想の手法。
• - 1/2手馬鋸: より複雑な構造で、馬が2手動くのに4サイクルかかる珍しい形式。

合駒との関係

馬鋸における王手はしばしば遠くから行われるため、玉方は合駒を使うことが可能です。例えば、離れた馬と玉の位置を考慮し、合駒をして手数を延ばす方法があります。このように、馬鋸は単なる技法ではなく、他の要素との相互作用によってさらに深い戦略を生むことができます。

詰将棋作家の中には、合駒を避けるための仕掛けを工夫する人も多く、よりプレイヤーに対し難易度の高い挑戦を提供しています。

まとめ

馬鋸は、その独特の動きと長手数を実現する手法から、詰将棋の創作に欠かせない技法となっています。歴史的にも多くの作品に影響を与え続け、新しいアプローチを模索する際の重要な手がかりとなっています。

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