駅馬

駅馬（えきば/はゆま/はいま）の概要と歴史

駅馬とは、古代日本の律令制において、駅家に配置された馬のことで、主要な交通路での報告や連絡を円滑に行うために利用されました。その名の通り、急な連絡が求められる際には、この「はゆま」つまり「早馬」が非常に重要な役割を果たしました。

駅馬の配置と管理

駅馬は、国の行政を担当する国司による駅戸で飼育されていました。具体的には、九等戸以上の駅戸においてこれを行っていました。また、厩牧令に基づいて、官道の種類に応じて必要な馬の数が決められており、大路の駅では20疋、中路の駅では10疋、小路の駅では5疋の馬が配置されるのが原則でした。しかし、実際の馬の数は駅の位置や道路の状態、あるいは分岐点などの条件に応じて、国司の裁量で調整されることがありました。

例えば、10世紀初めに作成された『延喜式』では、当時の駅に配置された馬の数が原則とは異なる事例が多数見られ、一部の駅には40疋の馬がいたことも記録されています。これらの馬の管理は年に一度行われ、病気や老朽化した馬がいる場合には、駅稲を利用して民間から優れた馬を購入し、馬の数を補充することが一般的でした。なお、駅馬を扱う従事者の不適切な取り扱いによって馬が死損した場合、損害賠償が求められることもありました。

公用での使用

公務に関連した連絡業務を行う役人や駅使が駅馬を利用する際は、駅鈴を提示することが求められ、提示した鈴の刻印の数に応じて馬が提供されました。この際、駅馬が道順を案内し、利用後に戻るために駅子という付き添い役が同行することになっていました。これは、急ぎの連絡を行うための効率的な手段でした。

駅馬の歴史

駅馬の制度は、大化の改新以前から存在しており、576年に欽明天皇が崩御した際には、駅馬が皇太子を呼び寄せる手段として利用された記録があります。また、603年には筑紫国での将軍の死去を報告するために、駅馬が通信手段として役立てられました。

大化の改新により、律令制度が確立されると、駅馬の制度はさらに整備され、各地に広がりました。駅馬に対する記録には、「駅馬・伝馬を給うことは皆鈴・伝符の剋数に依れ」と記され、多くの場面で駅鈴や伝符が重要な役割を果たしたことが伺えます。このように、駅馬は政府と地方、また地方同士との効率的なコミュニケーションを実現するための重要な手段として機能しました。

また、山陽道には特に多くの駅馬が配置されていたことが特徴的で、これは大陸との交流が盛んだったことにも起因しています。これらの制度は、律令国家としての日本の基盤を築く上でも重要な役割を果たしました。古代の人々にとって、駅馬はただの馬ではなく、国家のつながりを強化するための大切な存在であったと言えるでしょう。

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