騎馬砲兵

騎馬砲兵とは

騎馬砲兵（きばほうへい、Horse artillery）は、多数の馬によって牽引された大砲を操作する部隊であり、兵士はその馬に跨って移動します。この部隊は、騎兵と同等の機動力を持つ砲兵隊として編成され、通常は軽量または中量の砲を使用します。4頭から8頭の馬によって引かれるこの大砲は、砲架に搭載され、火薬や弾薬を収納する箱も連結されるか、別の砲架に装着されます。

騎馬砲兵の特徴

騎馬砲兵の最大の利点は、その機動性にあります。戦場において迅速に移動することで、攻撃目標を柔軟に変更でき、さらには上手くタイミングを併せて集中攻撃することが可能になります。このような運用により、指揮官の戦略を現実のものとし、従来の砲兵では困難だった素早い対応を実現しました。一方で、地形の影響を受けづらく、山岳地帯でも比較的容易に運用できる特性をもっています。

しかし、騎馬砲兵には欠点も存在します。大量の馬を必要とするため、多くの軍隊では限られた数しか騎馬砲兵として編成できませんでした。さらに、馬やそのための糧秣を失うと、騎馬砲兵は通常の砲兵に戻ってしまうリスクを抱えていました。これにより、軍の指揮官はしばしば実際の戦力と計画の間にギャップを感じることがありました。

歴史的背景

騎馬砲兵の歴史は、大砲が戦場に導入されてから始まりました。特にその重要性が増す中で、フリードリヒ大王が騎馬砲兵を導入したことで、その運用は飛躍的に進展しました。彼は、オーストリアやロシアとの戦闘で、自軍の砲撃の劣位を痛感し、軽量の砲を用いた騎馬砲兵の必要性を認識しました。

彼の軍では、砲兵が迅速に戦場に展開し、即座に射撃を開始する訓練が行われました。歩兵部隊と連携する場合、砲兵は敵の抵抗を排除するために先行して射撃を行い、歩兵が展開する際には援護する役割を担いました。また、騎兵部隊に随伴する際には、騎馬砲兵が敵に対する先制攻撃を行うことで、騎兵の突撃を効果的に支援しました。

現代の騎馬砲兵

19世紀末には、連発性能が向上したことで騎馬砲兵も次第に変化しました。歩兵部隊用の野砲と同じ砲を装備する国が増え、特に軽量化を施した指定砲が設計されるようになりました。しかし、第一次世界大戦における塹壕戦の影響で、再び通常の野砲と同じものを使用するようになりました。

20世紀に入ると、自動車と自走砲の普及により、騎馬による砲兵の役割は次第に薄れ、騎馬砲兵という概念は過去のものとなっていきました。それでも、馬による牽引は第二次世界大戦においても一定程度行われていました。

現在、イギリス陸軍には王立騎馬砲兵という部隊が存在し、実戦部隊として自走榴弾砲を装備した連隊が活動しています。また、王立騎馬砲兵・国王中隊は式典任務を担う部隊としても知られています。これらの部隊は、歴史的な伝統を引き継ぎつつ現代の軍事作戦にも対応しています。

関連項目

• - 驂馬
• - 砲兵トラクター

このように、騎馬砲兵はその機動性と実用性から長い間戦場での要素となり続け、現代でもその名残を見出すことができます。

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