高光度赤外線銀河

高光度赤外線銀河（LIRG）

高光度赤外線銀河（LIRG、Luminous Infrared Galaxy）は、遠赤外線領域において太陽光度の10の11乗倍を超える膨大なエネルギーを放出する特徴的な銀河です。

分類

赤外線での放出光度によって、さらに明るい銀河も分類されます。

LIRG: 太陽光度の10^11倍以上
超高光度赤外線銀河（ULIRG）: 太陽光度の10^12倍以上
極超高光度赤外線銀河（HLIRG）: 太陽光度の10^13倍以上
超高光度赤外線銀河（ELIRG）: 太陽光度の10^14倍以上

これらの銀河が放出するエネルギーの大部分は赤外線であり、特にLIRGではその9割以上を占めます。

活動のメカニズム

LIRGやULIRGの極端な明るさの主な原因は、銀河同士の活発な相互作用や合体にあると考えられています。特にULIRGは、ほとんど全てが合体過程にあるか、その直後の姿です。銀河衝突によって大量のガスや塵が中心部に流れ込み、これが二つの強力なエネルギー源を駆動します。

スターバーストと活動銀河核

集まったガスは、高密度領域で爆発的な星形成（スターバースト）を引き起こします。大量に生まれた若い星からの紫外線は周囲の塵に吸収され、赤外線として再放出されます。また、中心部の巨大ブラックホールにガスが供給されることで活動銀河核（AGN）が輝く場合もあります。LIRGではスターバーストが支配的であることが多いですが、ULIRGではスターバーストとAGNの両方が、あるいはAGNが主要なエネルギー源となっているケースも見られます。

高い星形成率

こうした激しい活動の結果、これらの銀河では驚異的なペースで星が生まれています。例えば、天の川銀河が年間あたり平均約1太陽質量分の星を形成するのに対し、ULIRGでは年間100太陽質量にも達する猛烈な星形成が進行しています。これは、宇宙における最も効率的な星形成の場の一つです。

銀河進化における役割

高光度赤外線銀河は、銀河進化の重要な段階を示す天体と見なされています。特にULIRGは、巨大な銀河合体を経て、将来的にクェーサーや巨大楕円銀河へと姿を変えていく過程にある可能性が指摘されています。激しい活動期は比較的短期間ですが、銀河の形態や内部構造を根本的に変化させる契機となります。

構造と環境

ULIRGは、太陽質量の10の12乗倍にも達する巨大な暗黒物質のハローの中に埋もれていると考えられています。この巨大な重力が周辺の銀河を引き寄せ、合体を促進する要因の一つとなっているのかもしれません。

代表的な天体

高光度赤外線銀河の代表的な例としては、以下のような天体があります。

ZW II 96: 若い強力なスターバースト領域を持つLIRG。
NGC 6240: 2つの核を持つULIRGで、銀河合体の典型。
Arp 220: 地球から最も近い距離にある有名なULIRG。
WISE J224607.57-052635.0: ELIRGに分類される、観測されている宇宙で最も明るい銀河の一つ。

これらの天体の研究は、宇宙における銀河の形成と進化のメカニズムを解明する上で重要な手がかりを提供しています。

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