高地地中海性気候

高地地中海性気候とは

高地地中海性気候は、ケッペンの気候区分において亜寒帯（冷帯）に属する気候区の一つです。しかし、その分布は他の冷帯気候とは異なり、温帯の地中海性気候や乾燥帯のステップ気候に隣接する高地に限定されています。この特異な分布から、地中海性高冷地気候、または冷帯夏季乾燥気候とも呼ばれます。この気候区は世界的にも珍しく、様々な呼び方が存在します（例: 冷涼性地中海式気候、高冷地型夏乾燥など）。

気候区分記号は、Dsa、Dsb、Dsc、Dsdで表されます。Dは冷帯、sは夏季乾燥を意味します。

高地地中海性気候の成立条件

高地地中海性気候の成立には、以下の条件を満たす必要があります。

最寒月平均気温が-3℃未満であること。
最暖月平均気温が10℃以上であること。
年平均降水量が乾燥限界以上であること。
最多雨月が冬にあり、3×最少雨月降水量＜最多雨月降水量かつ最少雨月降水量が30mm未満であること。

これらの条件に加え、最寒月と最暖月の平均気温によってさらに4つのタイプに分類されます。

Dsa: 最暖月平均気温が22℃以上。
Dsb: 最暖月平均気温が10℃以上22℃未満、かつ月平均気温10℃以上の月が4ヶ月以上。
Dsc: 最暖月平均気温が10℃以上22℃未満、月平均気温10℃以上の月が3ヶ月以下、かつ最寒月平均気温が-38℃以上-3℃未満。
Dsd: 最暖月平均気温が10℃以上22℃未満、月平均気温10℃以上の月が3ヶ月以下、かつ最寒月平均気温が-38℃未満。

成因

高地地中海性気候が成立する主な要因は、気温の逓減率です。標高が100m上がるごとに気温は約0.6℃低下します。このため、低地では温帯の地中海性気候に属する地域でも、高地では亜寒帯の条件を満たすことがあります。

また、乾燥帯のステップ気候に隣接する地域でもこの気候が見られます。気温の低下により乾燥限界が下がり、低地では乾燥気候でも高地では湿潤気候になることがあります。さらに、降雪によって冬季の降水量が増加し、夏季乾燥、冬季湿潤という特徴的な気候が形成されます。このため、本来海洋性気候である地中海性気候が、内陸部のアメリカ合衆国ワシントン州やオレゴン州、中央アジアにも分布しています。

特徴

高地地中海性気候は、乾燥した夏と湿潤な冬を特徴とします。夏季の気温は、Dsaでは高温になる一方、Dsb、Dsc、Dsdではそれほど高温にはなりません。冬季は他の亜寒帯気候と同様に寒さが厳しく、気温の年較差が大きくなります。また、日較差も大きいことが特徴です。

分布

この気候区は、以下の地域に分布しています。

アメリカ合衆国: ワシントン州東部、アイダホ州北西部・中央部、アラスカ州北西部
中東: イラン西部、トルコ東部、アルメニア南部
中央アジア: 高原地帯
ロシア: カムチャツカ地方、チュクチ自治管区の一部

3文字の記号別に見ると、Dsa、Dsb、Dsc、Dsdの順に分布地域が狭くなります。イラン西部やトルコ東部、アルメニア南部は緯度が低いため夏の気温が高く、ほとんどがDsaに属します。アメリカ合衆国のワシントン州東部やアイダホ州北西部にはDsaのほかDsbも分布しています。Dscはアイダホ州中央部やロシアのカムチャツカ地方の山岳地帯にわずかに見られる程度です。Dsdは、ロシアのチュクチ自治管区やマガダン州、カムチャツカ地方の州境付近にのみ分布する、非常に珍しい気候です。

代表的な都市（地点）

以下は、高地地中海性気候に属する代表的な都市（地点）です。

Dsa: ムシュ（トルコ）、ジェズカズガン（カザフスタン）、バルハシ（カザフスタン）
Dsb: バーサ（フィンランド）、タットレイオーコー・レイク（カナダ）、スミザーズ（カナダ）、バーンズ（アメリカ合衆国）
* Dsc: モンテ・チモーネ山（イタリア）、クリュチ（ロシア）

注意点として、緯度の高い地点（北欧、シベリア、カナダ、アラスカなど）では、最少雨月が4月、最多雨月が7～8月になることが多く、4月を夏とするかどうかで、亜寒帯湿潤気候（Df）に分類される場合もあります。

雨温図

サルマス、ウスゲンはDsa、ログンはDsb、カラギンスキー島とホーマーはDscに分類されます。

高地地中海性気候は、その分布の特殊性や、気候変動の影響を受けやすい点など、今後の研究が注目される気候区の一つです。

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