高柳芳夫

高柳芳夫：小説家と外交官の二つの顔

高柳芳夫（1931年1月17日-2023年11月23日）は、日本の小説家、外交官として知られています。栃木県宇都宮市に生まれ、京都大学文学部独文科を卒業後、同大学院修士課程を修了しました。

外務省でのキャリアと作家への転身

1957年、外務省に入省し、ドイツ大使館やベルリン総領事館で勤務しました。外交官としてのキャリアを積む傍ら、創作活動にも精力的に取り組みます。1971年には『黒い森の宿』で第10回オール讀物推理小説新人賞を受賞。作家としての才能を開花させました。

その後、1973年には『禿鷹城の惨劇』で第19回江戸川乱歩賞に候補としてノミネートされましたが、受賞には至りませんでした。しかし、松本清張氏の推薦もあり作品は刊行されます。この作品発表後、外務省研修所教務主事に異動となり、1977年には外務省を退職しました。作家への道を本格的に歩むことを決意したのです。

作家としての成功と多様な活動

退職後、高柳氏は作家として本格的に活動を始めます。1979年には、プラハの春を題材にした『プラハからの道化たち』で第25回江戸川乱歩賞を受賞。同作品は週刊文春ミステリーベスト10で第1位を獲得するなど、大きな成功を収めました。さらに、桐朋学園大学教授としてドイツ語を教えるなど、多様な分野で活躍しました。西ドイツ勲一等功績十字勲章を受章するなど、その功績は高く評価されました。

多岐にわたる作品群

高柳氏の作品は、ヨーロッパを舞台にしたミステリーや国際情勢を背景にした政治スリラーなど、多様なジャンルに及びます。ドイツ、チェコスロバキアなど、彼が実際に赴任した地を舞台とした作品も多く、リアリティあふれる描写が特徴です。数々の賞にノミネートされた作品は、その高い文学性を示しています。代表作として挙げられる『プラハからの道化たち』は、プラハの春の後の国際情勢を鋭く描いた作品で、高い評価を得ました。

作家活動の終焉とその後

1990年を最後に小説家としての活動を停止しました。その後は、ドイツ語教育など、他の分野で活躍を続けました。

作品リスト

高柳芳夫の作品リストは非常に長く、多くの作品を発表しています。主な作品としては以下のものがあります。

『禿鷹城の惨劇』
『ライン河の舞姫』（のちに『ラインの薔薇城殺人事件』と改題）
『プラハからの道化たち』
『影を裁く日』
『ベルリンの柩』
『モスクワの星を撃て』
『ベルリンの壁に死す』
『ベルリンの女』
『プラハの花嫁』（のちに『日本大使館殺人事件簿』と改題）
『摩天楼（ニューヨーク）の弩』
* その他多数

これらの作品は、単行本として出版されただけでなく、文庫本などでも広く読まれています。それぞれの作品には、ヨーロッパ各地を舞台としたスリリングな展開や、国際情勢への鋭い洞察が織り込まれています。

高柳芳夫の功績は、小説家としての成功にとどまりません。外交官としての経験とドイツ語教育への貢献も合わせて、多方面にわたる才能を示した稀有な人物であったと言えます。

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