高橋元吉

高橋元吉：大正・昭和を彩った詩人

高橋元吉（1893年-1965年）は、大正から昭和期に活躍した日本の詩人です。群馬県前橋市に生まれ、書店員として働きながら創作活動に励み、詩集『遠望』『耽視』『耶律』などを発表しました。

生い立ちと初期の活動

1893年、書籍商を営む家庭に生まれた高橋は、幼い頃に母を亡くします。前橋中学校（現・群馬県立前橋高等学校）卒業後、上京して三省堂に勤務。その後、実家の書店「煥乎堂」に戻り、店員として働きながら文学活動に没頭しました。メーテルリンクの翻訳なども手掛け、尾崎喜八らとの交流を通して詩作への道を歩み始めます。

文人との交流と詩作

1915年頃からは、武者小路実篤らとの交友が始まり、柳宗悦、千家元麿、岸田劉生、長与善郎といった当時の文化人たちと親交を深めました。特に、前橋中学の先輩にあたる萩原朔太郎とは深い交流があったと伝えられています。1916年には同人誌『生命の川』に参加し、創作活動を本格化させます。同年に結婚するも、1922年に妻を亡くすという悲しみを経験します。

詩集の発表と「煥乎堂」社長

1922年、処女詩集『遠望』を刊行しますが、その直後に妻を亡くすという悲劇に見舞われます。その後も創作活動を続け、1923年には第2詩集『耽視』を発表。詩誌『大街道』にも参加するなど、精力的に活動しました。1942年には、兄の死去に伴い、「煥乎堂」の社長を継ぎ、経営にも携わります。

後年の活動と受賞

戦後は、群馬詩人協会会長や上毛新聞「上毛詩壇」の選者を務めるなど、郷土の文化活動にも貢献しました。「群馬県の歌」や群馬県立前橋女子高等学校校歌の作詞も手掛けています。1958年に脳血栓で療養生活に入るも、1962年には『高橋元吉詩集』が出版され、翌年には高村光太郎賞を受賞するなど、晩年まで高く評価されました。1965年、神奈川県藤沢市で死去。没後には「高橋元吉文化賞」が設立されました。

詩作の特徴と業績

高橋元吉の詩は、繊細な感性と洗練された表現が特徴です。個人的な体験や自然への深い洞察を、独自の言葉で表現しました。『遠望』、『耽視』、『耶律』といった詩集は、昭和初期の詩壇に大きな影響を与えました。また、「煥乎堂」社長としての活動を通して、群馬の文化の発展にも貢献しました。彼の詩は、現代においても、多くの人々に感動を与え続けています。

参考文献

関俊治『元吉・秀雄』みやま文庫、1984年
前橋市史編さん委員会編『前橋市史』5巻、前橋市、1984年

関連人物

萩原朔太郎
尾崎喜八
武者小路実篤
倉田百三
千家元麿
岸田劉生
* 長与善郎

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