高橋正男

高橋 正男（たかはし まさお）は、1933年（昭和8年）に生まれ、日本の中東史学界に貢献した研究者であり、獨協大学名誉教授です。特にイェルサレム史を深く専攻しました。

来歴と学究生活

高橋氏は福島県会津若松市に生まれ育ちました。大学は中央大学経済学部で学び、1958年（昭和33年）に卒業。さらに学問への道を深めるため、中央大学大学院文学研究科の博士課程へ進みましたが、1966年（昭和41年）に満期退学しました。

彼の学究生活において特筆すべきは、海外での研究経験です。1964年（昭和39年）から1965年（昭和40年）にかけて、イスラエル政府給費生としてイェルサレム・ヘブライ大学へ留学し、専門分野である中東史、特にイェルサレムの歴史に関する造詣を深めました。この留学経験は、その後の研究活動に大きな影響を与えたと考えられます。

獨協大学でのキャリアと学会活動

大学院満期退学後、高橋氏は教育者としてのキャリアをスタートさせます。1966年（昭和41年）には獨協大学教養部の専任講師に着任しました。その後、順調に昇進し、助教授を経て外国語学部の教授を務め、長年にわたり学生の指導と研究活動に尽力しました。2004年（平成16年）に定年を迎え、その功績を称えられ獨協大学名誉教授の称号を贈られました。

また、学術団体の活動にも積極的に関与しました。1976年（昭和51年）から1988年（昭和63年）にかけての期間、社団法人日本オリエント学会の理事を務め、学会の運営や日本のオリエント学研究の発展に貢献しました。

研究業績と著作

高橋氏の研究対象は、イェルサレム史を中心に、古代イスラエル、旧約聖書の世界、オリエント文明、死海文書など、多岐にわたります。これらのテーマに関する数多くの著作や翻訳を発表し、専門家だけでなく一般読者にもその研究成果を分かりやすく伝えました。

主な著書には、『世界の都市の物語 14 イェルサレム』（文藝春秋）、『死海文書 甦る古代ユダヤ教』（講談社選書メチエ）、『物語イスラエルの歴史 アブラハムから中東戦争まで』（中公新書）、『旧約聖書の世界』『預言者の世界』などがあります。これらの著作は、長年の研究に基づいた深い知見を平易な文章で解説しており、多くの読者に親しまれました。特にイェルサレムに関する著作は、彼の主要な研究テーマを反映したものです。

また、海外の重要な研究成果を日本に紹介する翻訳活動にも精力的に取り組みました。C.H.ゴールドンによる『ウガリト文学と古代世界』、ハリー・トーマス・フランクの『歴史地図と写真で実証する聖書の世界』（共訳）、ダン・バハトの『図説イェルサレムの歴史』など、オリエント学や聖書学、イェルサレム研究における基礎となるべき文献の翻訳は、国内の研究基盤の充実に寄与しました。

これらの多岐にわたる業績を通じて、高橋正男氏は日本における中東史、特にイェルサレム史研究の発展に重要な足跡を残しました。

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