高福壽

高福壽（コ・ボクス）の生涯と業績

高福壽（コ・ボクス、고복수、1911年12月29日 - 1972年2月10日）は、日本統治時代を背景に活動した韓国の著名な歌手、映画企画家、映画プロデューサーです。彼はその活動を通じて、韓国文化の発展に大きく寄与しました。

生い立ちとデビュー

高福壽は慶尚南道蔚山郡（現在の蔚山広域市）に生まれました。幼少期は、実家の麺工場や雑貨店の影響を受けながら成長しました。子供の頃から蓄音機に触れて音楽に親しみ、歌うことを楽しんでいました。彼の音楽への情熱はやがて実を結び、1933年にはコロムビア・レコードが主催する全国歌謡コンクールに参加。そこで3位に入賞し、歌手としてのキャリアが始まります。

コンクールの入賞者に与えられるレコーディングの機会を得られなかったものの、オーケーレコードの経営者である李哲の助けを得て、1934年に「他郷」や「梨園哀曲」をリリースしました。「他郷」は、彼の代表曲となり、日本統治時代の朝鮮で大流行しました。これにより、彼は韓国の歌謡曲の歴史に名を刻むこととなりました。

音楽活動の進展

高福壽は、その後もさまざまなヒット曲を生み出しました。特に、1936年に発表した「짝사랑（片思い）」や、李銀波とのデュエット曲「풍년송（豊年頌）」などは、彼の名声をさらに高める要因となりました。オーケーレコードと契約し、専属公演団である朝鮮楽劇団で活動を続けましたが、1940年頃からはビクターレコードに移籍し、さらなる進展を遂げました。

高福壽は、蔡奎燁や姜弘植と並ぶ日本統治時代の人気歌手として知られ、彼の歌唱スタイルは独特の哀愁が漂っています。彼が手がけた「他郷」や「砂漠の恨」などは、恨みを歌った歌詞が特徴で、多くのファンに愛されました。詩人の金陵人や作曲家の孫牧人とのコラボレーションにより、彼の作品はますます豊かになり、彼らのグループ名は「손금고 (孫金高) トリオ」として知られるようになりました。

人生の波瀾

しかし、高福壽の人生には数多くの困難も伴いました。1940年代からは舞台公演中心の活動にシフトし、その後、朝鮮戦争が勃発。彼は朝鮮人民軍に逮捕されるという衝撃的な経験をしました。その後、1957年に引退公演を行い、音楽活動から身を引きましたが、不運が続きました。事業に挑戦するも失敗が続き、生活は困窮しました。彼の妻である黃琴心は、歌手として活動しながら一家を支え続けました。

晩年と顕彰

高福壽は、晩年病気に苦しみ、1972年に亡くなりました。享年は62歳でした。彼の子どもたちは、それぞれ音楽の道を歩み続け、自身のキャリアを築いています。長男はトロット歌手の高英準、次男はカトリック福音歌手のコ・ヨンミン、三男は作曲家のゴ・ビョンジュンです。

さらに、高福壽の功績は後年に顕彰され、1987年から故郷の蔚山では「高福壽歌謡祭」が開催され、1991年には歌碑が設置されるなど、彼の音楽と生涯は後世に引き継がれています。高福壽は、不幸の中でも音楽を通じて多くの人々に感動を与えた存在として、その名を記憶され続けています。

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