高窪利一

髙窪 利一（たかくぼ としかず）

1930年（昭和5年）4月24日、東京都に生まれる。日本の著名な法学者であり、専門は商法、特に有価証券法や金融法を深く研究した。

都立日比谷高校を卒業後、中央大学法学部に進学し、1953年に卒業。その後、同大学大学院民法専攻修士課程に進み、1955年に修了した。大学院での指導教授は四代升本喜兵衛氏である。修了後、母校である中央大学に助手として奉職。1959年には助教授に昇任し、1966年には法学部教授となった。

中央大学では教育・研究活動に加え、大学運営にも尽力した。1969年には学生部長を務めたほか、学校法人中央大学評議員や法職講座運営委員会委員長（1988年）、大学院法学研究科委員長（1991年）といった要職を歴任した。1995年には、論文「有価証券法研究」により中央大学から博士（法学）の学位を取得している。

学外での活動も多岐にわたる。1983年から1988年にかけて公認会計士第二次試験の考査委員を務め、商法の専門知識を実務・試験制度にも活かした。1996年からは日本学術会議の会員にも選ばれ、法学分野における学術振興に貢献した。また、1999年には弁護士登録を行い（第二東京弁護士会所属）、山﨑司平法律事務所の客員弁護士として実務にも携わった。

中央大学での長い教員生活を経て、2001年に定年を迎え、同大学名誉教授の称号を授与された。

人物像としては、東京大学文科III類と中央大学法学部に合格した際、父が高窪喜八郎氏（商法学者、元中央大学教授）であったことや、当時の中央大学にあった学士助手制度が商法学者となる上で有利と判断し、中央大学への進学を決めたというエピソードが知られている。また、中央大学多摩キャンパス内に位置し、多くの学生が研究に励む「炎の塔」に所属する中央大学商法研究会の創設者としても、その教育に対する情熱がうかがえる。

学説においては、特に手形法分野で独創的な見解を示した。手形理論における創造説の中でも、所有権説という独自の立場をとったことで知られる。これらの特色ある見解は「高窪説」として商法学界、とりわけ有価証券法や金融法分野で広く知られ、影響を与えた。

親族には、著名な法学者が多い。父は前述の商法学者、高窪喜八郎氏。刑事法学者として名高い高窪貞人氏（青山学院大学名誉教授）は弟にあたる。また、息子である高窪統氏は工学者（中央大学理工学部元教授）であり、娘もいる。

主な著書としては、『現代手形小切手法』、『手形小切手法通論』、『銀行実務 手形小切手法』、『商法（手形・小切手法）』などがある。

学術的な功績に加え、末広文化賞も受賞している。没後、正五位勲三等瑞宝章が追贈された。2003年（平成15年）3月17日に逝去。

門下生には、木内宜彦氏、菊地雄介氏などがいる。

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