高見沢忠雄

高見沢忠雄は、日本の浮世絵版画複製技術史にその名を刻む重要な人物です。1899年、東京に生まれました。高見沢遠治、上村益郎を兄弟に持ち、慶應義塾大学を卒業しています。

彼のキャリアは、兄から受け継いだ浮世絵版画複製技術を基盤として展開しました。1911年、高見沢木版社（現在の高見沢木版研究所）を創業し、浮世絵の複製事業に乗り出します。単なる複製にとどまらず、高見沢忠雄は浮世絵の研究にも深く関与しました。近世初期の風俗画にも造詣が深く、それらの研究成果を自身の出版活動に反映させています。

高見沢木版社では、数々の浮世絵の復刻版を制作、出版しました。高品質な複製技術と、浮世絵への深い理解に基づいた出版活動は、広く世間に高く評価され、浮世絵の普及に貢献しました。また、自身も木版画集を出版するなど、多岐に渡る活動を通して日本の木版画文化の発展に大きく貢献しました。

高見沢忠雄の活動は、出版事業だけに留まりませんでした。彼は浮世絵研究の第一人者として、研究活動にも精力的に取り組んでいました。その専門知識と情熱は、彼が1947年に創刊した雑誌『浮世絵草紙』（吉田暎二編）にも如実に表れています。同誌は浮世絵研究者や愛好家にとって貴重な情報源となり、日本の浮世絵研究の発展に重要な役割を果たしました。

浮世絵とその周辺文化を深く研究し、その成果を惜しみなく世に問うた高見沢忠雄。彼の仕事は、単なる複製技術の継承や出版活動以上の意義を持っていました。それは日本の伝統文化を未来へと繋ぐ、重要な役割を担っていたと言えるでしょう。

1970年には『南蛮屏風』（共著、鹿島出版会）を出版し、その研究成果を世に発表しました。彼の没後、1985年の『浮世絵芸術』第83号には「訃報 高見沢忠雄氏逝去」の記事が掲載され、その功績が改めて広く伝えられました。

高見沢忠雄は、1985年2月17日、聖マリアンナ医科大学附属病院で悪性腫瘍による心不全のため逝去しました。享年85歳。彼の死は、日本の浮世絵界に大きな損失をもたらしましたが、彼の残した業績は、これからも日本の浮世絵文化を支え続けるでしょう。彼の生涯は、浮世絵という日本の伝統文化を愛し、その保存と発展に情熱を傾けた一人の人物の生き様を示しています。

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