高速電波バースト
高速電波バースト(Fast Radio Burst: FRB)とは
高速電波バースト（FRB）は、数百ナノ秒から数ミリ秒という非常に短い時間で、突発的に発生する電波パルスのことです。その発生メカニズムは未だ解明されておらず、高エネルギー現象として注目されています。2006年に、ダンカン・ロリマー氏らが過去のデータから初めて発見しました。
エネルギーと観測
平均的なFRBは、わずか数ミリ秒の間に10^38から10^40エルグという莫大なエネルギーを放出します。これは太陽が3日間で放出するエネルギーに匹敵します。しかし、FRBは数十億光年という宇宙論的な距離から発生しているため、地球に届く信号は非常に微弱です。
発生源の謎
FRBの発生源については、中性子星やブラックホールなどのコンパクト天体の合体や相互作用、マグネター、活動銀河核などが候補として挙げられています。近年では、マグネター起源説が有力視されており、2020年に天の川銀河内で観測されたFRB 200428がマグネターSGR1935+2154から発生したことが確認されました。しかし、未だに他の発生源の可能性も議論されています。
特徴
- - 短時間性: 数ミリ秒以下の極めて短い時間で発生します。
- - 点源性: 天球上の一点から観測されます。
- - 広帯域性: 広範囲な周波数で観測されます。
- - 等方性: 天球上のあらゆる方向から観測されます。
- - 分散量度: 電波が星間プラズマの影響を受ける度合いを示し、遠い天体ほど大きい値を示します。
観測周波数
初期の観測では1400 MHz付近の周波数が中心でしたが、近年では400から800 MHzの低い周波数でも検出されるようになりました。
反復性
ほとんどのFRBは一度しか観測されませんが、反復してバーストを起こすものも確認されています。ただし、そのほとんどは規則性がなく、規則的な反復が確認されているものは、2020年時点でFRB 180916のみです。
起源の仮説
マグネター説
最も有力な説の一つで、マグネターのフレア活動がFRBの発生源であると考えられています。2020年のFRB 200428の観測が、この説を強く支持しています。
コンパクト天体合体説
ブラックホールや中性子星などのコンパクト天体の合体も、FRBの発生源として考えられています。ガンマ線バーストとの関連も示唆されています。
その他
新たな仮説
反復バーストの観測から、活動銀河核のような環境で発生する大規模な量子もつれ状態がFRBの原因であるとする説や、そもそもFRBが単一の現象ではない可能性も指摘されています。
異説
SF的な可能性として、知的文明が使用する光帆船の動力源である電磁波が、FRBの原因であるとする説もあります。
観測史
初期の発見
最初のFRBは、2001年に記録されたデータを2006年に再解析することで発見され、ロリマー・バーストと呼ばれます。
その後の観測
2013年以降、多くのFRBが発見され、その起源が銀河系外であることが示唆されました。2016年には、FRB 121102が反復してバーストすることが確認されました。
FRB 200428
2020年に観測されたFRB 200428は、天の川銀河内のマグネターSGR1935+2154から発生したことが確認され、FRBの発生源としてマグネターが有力であることが確定的となりました。
まとめ
高速電波バーストは、宇宙で発生する謎に満ちた高エネルギー現象です。その発生メカニズムの解明は、宇宙物理学における重要な課題となっています。今後の観測と研究の進展により、FRBの謎が解き明かされることが期待されます。
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