高銀

高銀（コ・ウン）

高銀（コ・ウン、1933年8月1日生まれ）は、韓国の詩人、作家、そして民主化活動家として広く知られた存在です。本名は高銀泰（コ・ウンテ）であり、韓国文学を代表する人物の一人でした。彼の詩は27ヶ国語に翻訳され、韓国の報道機関では2002年から2017年にわたって「ノーベル文学賞候補者」としてしばしば取り上げられ、韓国文学界において高い評価を受けていました。

しかし、彼の名声は突然のセクハラ告発により揺らいでしまいました。1960年代から続く韓国文学界のセクハラ問題が表面化し、その中心にいた高銀は公然と批判を受けることになりました。その結果、彼は公の場から姿を消し、告発者と報道機関に対して損害賠償を求めるも、最終的に敗訴しています。

来歴

高銀は1933年に全羅北道群山で生まれました。彼の本貫は済州高氏です。群山中学校を中退した後、1952年には慶尚南道の海印寺に入山し僧侶となりました。僧侶としての生活の中で、1958年に詩「肺結核」を発表し、翌1960年には初の詩集『彼岸感性』を出版しました。

彼の文学人生は、韓国戦争の影響を深く受けています。故郷での経験、特に良民虐殺事件によるトラウマは、彼の作品に大きな影響を与えました。

還俗と民主化運動

1962年に還俗した後、高銀は詩の創作活動に専念しました。彼は1970年代に朴正煕政権下で活動し、自由言論実践文人協議会の代表として、民主化運動に積極的に関与しました。そして多くの投獄を経験しました。1980年には国家保安法違反で逮捕され、10年の懲役を言い渡されましたが、1982年に出獄します。その後も獄中の作家を救済するための活動を続けました。

韓国の民主化以降

1988年に万海文学賞を受賞し、韓国文学の実力者として認められるようになりました。南北作家会談の代表としても活躍し、さまざまな詩の朗読活動を行いました。特に2000年の南北首脳会談の際には、金大中大統領の前で統一を願う詩を朗読し、歴史的な瞬間を飾りました。

高銀は文壇の重要人物として、朴槿恵政権に対する抗議活動にも参加しました。その中で多くの詩を発表し、社会的影響力を持った作家として活躍していました。

セクハラ問題の発覚

2017年、詩人チェ・ヨンミが詩を通じて高銀のセクハラ行為を示唆しました。彼女はメディアに出演し、その行動が常習的なものであることを告発しました。この発言は文学界に衝撃を与え、高銀を取り巻く環境は一変しました。批判は高銀だけでなく、彼を長年擁護してきた文壇やマスコミにも向けられました。

その後、高銀はチェ・ヨンミと報道機関に対して訴訟を起こしましたが、結果として敗訴となり、彼の社会的地位は大きく損なわれました。2018年には彼の著作に関する展示が撤去され、長い沈黙を続けた後、2023年に新作を発表しようとしましたが、世論の批判を受けて取りやめとなりました。

作品

高銀の代表作には、初の詩集『彼岸感性』や、5600人以上を題材とした『萬人譜』、長編叙事詩『白頭山』などがあります。これらの作品は、彼の詩的才能がいかに多彩であったかを物語っています。特に『萬人譜』は、数多くの人物を描くことで、個々の人間の物語を通じて歴史を語る作品となっています。

高銀はさまざまな文学賞を受賞し、その評価は国内外で高いものです。しかし、近年のセクハラ問題は彼の作品に対する評価にも影を落としているのが現状です。彼の文学的影響は依然として強いものの、同時にその評価は大きな揺らぎを伴っています。

もう一度検索