髙梨雅明

髙梨 雅明（たかなし まさあき）

髙梨雅明氏は、日本の豊かな緑地空間の整備と保全に多大な貢献をされてきた人物です。長年にわたり国土交通省（旧建設省）において公園緑地行政の中枢を担い、退職後も要職にあって我が国の造園界の発展を力強く牽引し続けています。現在は一般財団法人公園財団の副理事長、そして一般社団法人日本公園緑地協会の副会長として、現場と業界全体の振興に尽力されています。また、東京農業大学の客員教授として、次世代の造園・緑地専門家の育成にも情熱を注いでいます。

そのキャリアは1974年に建設省に入省したことから始まります。以来、2006年に退職されるまでの三十余年、常に公園緑地行政の最前線で活躍されました。建設省、その後の国土交通省本省での勤務に加え、日本道路公団、神奈川県庁、大津市役所など、幅広い組織での経験を通じて、多角的な視点から公園緑地政策の推進に貢献されました。これらの現場での経験は、その後の政策立案や制度設計に活かされ、より実効性のある施策に結びついたと言えるでしょう。

特に、主要な政策や制度の創設においては中心的な役割を果たしました。課長補佐時代には、平成3年度から始まった都市公園等整備五カ年計画の策定に深く関与し、その後の我が国の公園緑地整備の方向性を定める上で重要な礎を築きました。さらに、都市緑地対策室長を務めていた時期には、都市における緑地の計画的な整備と保全を図るための根幹となる緑の基本計画制度や、市民が身近な場所で緑地を確保・維持するための市民緑地制度の創設を主導しました。公園緑地課長としては、美しい都市景観の形成と一体的に緑化を推進するための景観緑三法（都市緑地保全法等の一部を改正する法律、都市計画法等の一部を改正する法律、建築基準法の一部を改正する法律）の制定に尽力し、都市における緑の質と量の向上に大きく貢献しました。また、国営昭和記念公園のような大規模な国家プロジェクトにおいても、その第1期開園に向けた設計や工事段階で重要な役割を担い、国民に親しまれる広大な緑地空間の実現に貢献しました。

国土交通省退職後も、その豊富な知識と経験は日本の造園・緑地分野にとって不可欠な財産となっています。公園財団や日本公園緑地協会といった公益性の高い組織での活動に加え、日本造園建設業協会、（公財）都市緑化機構、東京都公園審議会、日本造園学会など、産・官・学の垣根を越えた幅広い活動に関与し、業界全体の連携強化と発展に寄与されています。これらの活動を通じて、後進の指導育成にも積極的に取り組み、日本の造園界の持続的な発展に貢献し続けています。

長年の公共分野での功績が認められ、2021年には日本の栄典制度における瑞宝中綬章を受章されました。これは、国家または公共に対し功労のある者に授与される勲章であり、髙梨氏のこれまでの貢献の大きさを物語っています。さらに、2022年には、公園緑地分野の発展に特に顕著な功績を残した個人に贈られる権威ある賞である第44回日本公園緑地協会北村賞を受賞されました。これらの受賞は、髙梨氏が生涯をかけて取り組んできた公園緑地行政と造園界への貢献が、広く社会に認められていることの証と言えるでしょう。

髙梨雅明氏は、政策の企画立案から、具体的な制度の創設、大規模プロジェクトの実施、そして退職後の業界振興や教育活動に至るまで、日本の公園緑地と造園分野のあらゆる側面に深い足跡を残しています。そのリーダーシップと専門知識は、我が国の緑豊かな環境を形成し、未来に引き継いでいく上で、計り知れない影響を与えています。

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